助教クラスで基盤Bに採択されるかを調べた

10月と言えば科研費申請のシーズン。僕が属していた京都大学学術研究支援室ではURA総動員で申請書のブラッシュアップを行っているのだが、チェックしていた基盤研究Bの研究計画調書の中で「助教」の方が申請代表者のものがあった。基盤研究Bというと教授、准教授クラスが採択されているイメージがあったので、この申請書を見た時、正直これは難しいんじゃないと思った。が、僕がそう思い込んでいるだけかもしれない。というわけで、データを調べてみた。

データソース

人文社会系分野における共同研究の頻度と規模」を調べたときと同様、科研費データベースに収録されている1996年以降に採択された課題を分析ソースとして用いた。科研費データベースのデータでは、課題(研究)内容や申請カテゴリ(例: 基盤研究A)といった情報以外に、各課題が採択された際の申請者の職階(教授、准教授、講師、助教など)も載っているので、これを分析に用いた。

採択者の内訳

図1に「基盤研究B採択者の職階の内訳」に記す。Unknownは所属が確認できなかった採択者を意味している。このUnknownの採択者の実態が気になるが、グラフを見る限り基盤研究Bにおける助教の採択者は全体の0.9%。助手も助教としてカウントしたとしても合計2.0%。1996年から2013年までの採択データを眺める限り、助教クラスで基盤研究Bに採択されている人はかなり少ない。その中でも採択されている助教は相当な強者なんだろうか。


図1: 基盤研究Bの職階別採択者の内訳

 

ちなみに図2に基盤研究A、図3に基盤研究Cの職階別採択者の内訳をまとめた。さすがに2000万〜5000万円程度の研究費を手にすることになる基盤研究Aになると、採択者の大半は教授クラス。きっと大御所クラスの教授なのだろう。助教で採択されている人は全体のわずか0.2%(それでも採択されている人がいるのが驚き!)。

図1: 基盤研究Aの職階別採択者の内訳

 

一方、基盤Cになると採択者の職階は割とばらける。助教、助手は全体の10%程度。助教、助手クラスだと若手研究A、Bに申請する人も多いだろうから、10%という数字は少なくないと思う。

図3: 基盤研究Cの職階別採択者の内訳

 

雑感

審査および評価に関する規程にも書かれているように、助成対象プロジェクトを決めるには「提案内容の新規性や意義」だけではなく「研究遂行能力」や「研究計画」も重要な要素となる。研究遂行能力を評価するに際して、論文の数や職階を見て決めるってことはないだろうとは思うが、上のデータを見る限り、結果的には研究成果が相対的に少なくなる助教クラスが基盤Bに採択されるのは難しいのかなと感じた。

こういうデータが提示されたときに、申請支援に携わるスタッフは申請カテゴリを替えることを勧めるのか、それとも採択に向けて何らかの策をこらすのかも考えどころ。全国のURAのみなさんは、こういうときどうするんですかね?

人文社会系分野における共同研究の頻度と規模

URAシンポジウム2014の人文社会系研究支援セッションにて、パネラーの一人から「人文社会系の研究者は共同研究をあまりしないので…」という発言があった。

確かに人文社会系の研究者はどちらかというと大学にあまり出てこず、自分の書斎で黙々と研究しているイメージがないこともない。しかし、歴史に関するテレビ番組なんかを見ていると、研究者がグループになって遺跡を発掘している映像なんか映ったりすることもあるので、共同研究プロジェクトが行われてないことはないはず。

人文社会系研究において、はたして共同研究はどのくらい存在するのか?公開されているデータベースからデータを収集して調べてみた。

データソース

いわゆる理系研究の共同研究分析では、Elsevier社やThomson社が提供している論文データベースを元に、論文の共著者ネットワークの分析が行われる。一方、日本の人文社会系研究の論文はこれらデータベースに収録されているケースがほとんど稀なので、論文をベースにした研究者ネットワーク分析を行うことはできない。そこで、今回は科研費プロジェクトに着目し。各研究プロジェクトがどのようなメンバーで構成されているかを調べることで、共同研究の状況を分析してみることにした。

科研費の採択課題は、科研費データベースで公開されている。例えば、これはiPS細胞の山中先生のプロジェクトの1つ。各課題ページには、

  • 課題名(プロジェクトタイトル)
  • 課題概要
  • 研究代表者
  • 研究分担者、研究協力者
  • 開始年
  • 研究種目(基盤A, 若手Bなど)
  • 研究分野
  • 研究費配分額

などなど。

今回はこの科研費データベースから1996年以降に採択された全課題を抽出した。「1996年」を開始年にした理由は、その年に基盤研究(A)(B)(C)(S)が始まったから。抽出された課題数、すなわち1996年に採択された課題総数は327,369 件だった。

人文社会系分野 vs. それ以外の分野の研究分野

科研費プロジェクトにおいて人文社会系研究とそれ以外の研究を区別するために、今回は各採択課題の研究分野に着目。ここにあるように、研究分野が「人文社会のカテゴリ、サブカテゴリ」に分類されているものを「人文社会系(研究プロジェクト)」、それ以外を「非人文社会系(プロジェクト)」とした。

1996年以降に採択された科研費課題で、今も申請種目として存在するもの(例: 基盤A、B、C、若手A、Bなど)を「人文社会系」「非人文社会系」ごとにまとめた統計情報を以下に記す。

 

表1: 人文社会系分野およびそれ以外の分野の採択課題数

表1をみると特別推進研究や新学術領域に人文社会系は採択されていないのかと不思議に思ったのだが、そういうわけではなかった。例えば新学術領域の採択課題を調べてみると、ここにあるように研究分野として「人文社会系」が割り当てられていないが新学術領域研究として採択されているものがあることが分かる。科研費データベースさん、人文社会系のフラグをちゃんと割り当てて欲しかったなぁ…

表1では採択課題の研究種目別割合が分かりにくいので、図1に人文社会系採択課題の割合、図2にその他の分野(非人文社会系)の採択課題の割合を円グラフにしてみた。


図1: 研究種目別にみた人文社会系分野の採択課題数の分布


図2: 研究種目別にみたその他の分野の採択課題数の分布

 

さてさて、共同研究の頻度や規模を調べるためには、予算規模に関連する研究種目を調べるのではなく、実際に研究プロジェクトを構成する研究者の数を調べる必要がある。幸い、科研費データベースには各採択課題にどんな研究者が参画しているかが公開されている。そこで、1研究プロジェクトに参加している研究者の数を、人文社会系分野と非人文社会系分野で比較してみた。なお、今回の分析では研究種目の性質上、個人研究プロジェクトにならざるを得ないものを無視するため、研究課題の表1のデータから、若手研究(A)(B)、研究活動スタート支援、若手研究(スタートアップ)といった個人研究課題を取り除いた。

 

図3: N人以上の研究者から構成される研究課題(プロジェクト)の割合

 

図3は、人文社会系もしくは非人文社会系分野における採択課題のうち、N人以上の研究者から構成される採択課題が何%くらいあるかを示したグラフである。グラフをグリグリすると具体的な数値が確認できるが、例えば折れ線グラフで横軸が2のところに着目すると、人文社会系分野では2人以上の研究者が参加している研究課題(プロジェクト)が人文社会系採択課題の39%を占めていることが分かる。

さて図4を眺めてみると、横軸が4のところで「人文社会系分野」の折れ線と「非人文社会系分野」の折れ線が交差していることが分かる。これは、

  • 参画研究者の数が3以下の研究プロジェクトについては、非人文社会系分野のほうが人文社会系分野よりも(割合として)多かった
  • 参画研究者の数が5以上の研究プロジェクトについては、人文社会系分野のほうが非人文社会系分野よりも(割合として)多かった

ことを意味する。

 

雑感

人文社会系の研究者は個人研究が多い印象が強かったので、非人文社会系分野よりも小規模な研究がより多い傾向にあると予想していた。しかし、上の事実は全く逆だった。科研費の採択課題を見る限り、小規模な研究プロジェクトはむしろ非人文社会系分野の方が(割合としては)多く、参画者数が5人以上になるような大プロジェクトは人文社会系分野の方が多かったのである。URAシンポジウム2014で「人文社会系の研究者は共同研究をあまりしないので…」ということ発言があったが、今回の調査からによると必ずしもそうではなさそうだ。

ところで、なぜ「4」という数字で折れ線が交差したのだろうか? 色々考えてみたのだが、研究室の有無が関係しているような気がした。理系分野では研究は「研究室」という単位で行われることが多い。研究室はボスである教授、准教授、講師、助教で構成される。そのメンバーで研究プロジェクトを組むとすると、1-4人くらいのチームになる。僕の古巣の研究室を振り返ってみても、だいたいそんな感じだ。一方で人文社会系分野では研究室という形態はあまり聞いたことない。そのような状況が図3のような結果を生んだのではなかろうか。

そう考えると、人文社会系分野も研究室のように研究者が常に集まっているような状況をうまく作ることができれば、(2-4人レベルの)小規模な研究プロジェクトが増えるのではなかろうか。大規模な研究プロジェクトはしっかり行われているんだし。一方で、研究室なんて文化がないからこそ人文社会系研究ができるんだ、ということもあるかもしれないので、実際どういうニーズがあるのか、研究者とじっくり話合う必要がありそうだ。

「行列のできるURAお悩み相談所」の狙いについて

2013年11月18-19日に開催された第3回URAシンポジウム・第5回RA研究会「行列のできるURAお悩み相談所」という企画を実施した.企画の狙いに関して,文書で発表する機会がなかったので,この場を持ってちょっとだけ説明しようと思う.

企画者の思い

私たちが今回の企画で目指したこと,それは研究会を「本当の意味」で経験・知識を共有・議論する場にするということです.コミュニティの中で知識やスキル,課題を共有・議論するためには,研究会やシンポジウムを利用するというのが一般的です.URA業界でも同様の取り組みは行われていますが,どうも概要的な発表が多く,持ち帰って自分の業務に活かしにくい.本当はもっと踏み込んで議論したいのに,形式的な議論に留まっている.参加者が競合相手であり,かつ扱っている内容も機密事項も多いからなのでしょうか.とにかく,こういったシーンが多いように感じていました.シンポジウムや研究会の開催実績が残るだけでは,なんだか虚しいですよね.URAの必要性を世に知らしめるためには,URA自身のレベルをもっとUPさせないといけない.そのためには,コミュニティの中で実務にもっと踏み込んでざっくばらんに議論する場をデザインしたいと思いました.

形式的なイベントに終わらないよう,色々な事を考えました.

  • URAのみんなが実際に悩んでいる問題を議論し持ち帰ってもらうにはどうしたらよいか?
  • どんな小さい疑問・悩みでもいいので,正直に意見を出してもらうにはどうしたよいか?
  • たくさんの人に参加してもらい、会場でもいろいろと考えてもらうにはどうしたらよいか?

等々,URAシンポジウム・研究会に参加された方に共感をもっていただき,行動を促せるような場について企画者同士で議論し,必要であれば知り合いのURA関係者に意見も求めました.その結果,

  • 匿名で悩み・疑問を投稿する
  • 多様なバックグラウンドを持つ相談員に大喜利形式で解決策を語ってもらう
  • 投稿してもらった悩み・疑問でポスターを完成させていく

といったアイデアが生まれ,それらを統合する形であの異色のポスターそして企画セッションが作られました.

200人を超えるセッション参加申し込み者の皆様の期待に応えられたかどうかは分かりませんが,URAの自己研鑽の場を作る上で今回の取り組みが何かの参考になれば幸いです.そして,今回の経験を糧にURAコミュニティがより活発になるような活動を行っていきたいと思います.本企画にご興味・ご関心をお持ちの方がおられましたら,ぜひ一緒に何かやりましょう.

僕がアートに関心を持つ理由

情報学の研究者で,アート門外漢な僕がアートに関心をもった理由.それは,アートそのものよりもアーティストの生き様にある.既成概念にとらわれず,新しい世界観をまっすぐに表現しようと格闘するアーティスト.そんなアーティストの生き様が,僕はとても好きだ.

ところで,アーティストと研究者との間に,僕はある種の類似性を感じている.研究者にもさまざまなタイプが存在する.(1)真理を探求を目指す研究者.(2)社会問題の解決を目指す研究者.そして,(3)新しい世界観を創造し,それを世に問う研究者.アーティストの考え方に触れるたびに,フィールドや表現方法が違えど,(特にタイプ(3)の)研究者とアーティストとの間に共通の生き様を感じるのだ.

アーティストと研究者.一見すると異なるものであるが,互いの活動に新しい刺激を与えうる可能性があるのではないか.アーティストとの交流によって,研究者の考え方,発想が刺激される.その結果,既成概念を打ち破り,世に新たな価値をもたらす研究が生まれる — 僕はそれを密かに期待している.研究のタコツボ化が進みつつある今日だからこそ.

未来社会の多様性を高めるクリエイティブな研究・アート活動を促進するためにも,アーティストと研究者が集う場をARTLOGUEが作るというのもありかもしれない.

 

※ この文章は,山本が理事を務める一般社団法人World Art Dialogueのメールマガジンのコラムに寄稿した原稿です(ARTLOGUE mag No,0014).

【Credibility for the 21st Century】6.「情報ソース = 組織」である場合

組織の信憑性(organizational credibility)

  • 会社や団体といった組織(organization)着目した情報ソースの信憑性に関する研究も行われてきた.
  • 組織を情報ソースとする信憑性研究では,顧客の態度や行動に影響を与える要因解明が行われてきた(Gass & Seiter 1999).
  • 広告やマーケティング分野の文脈では,企業の信憑性(corporate credibility),団体の信憑性(institutional credibility),広告主の信憑性(advertiser credibility),小売業者の信憑性(retailer credibility)が研究されてきた.
  • 企業信憑性 = 「顧客や投資家が企業の信頼性や専門性をどの程度信用するかの度合い」(Goldsmith, Lafferty and Newell 2000)
  • 組織の信憑性の背景には,メッセージというものは個人ではなく,むしろ長年の経験や情報を持つ複雑な組織構造から発信されるものである,という考え方がある.

組織の信憑性に関する研究項目

  • 組織の信憑性に関する分野では,「組織の信憑性が顧客の態度や行動に与える影響」「組織の信憑性の要素」について研究が行われてきた.
  • 組織の信憑性は,顧客のブランドに対する考え方や購入意思に大きな影響を与える(Lafferty & Goldsmith 1999).
  • 組織の信憑性(source credibility as organization)に関する要素(Bobinski, Cox 1996, Hammond 1987, MacKenzie & Lutz 1989, O’Reilly & Roverts 1976)
    • 個人の信憑性(source credibility as person)と共通する要素: 信頼性(trustworthiness),専門性(expertise),魅力(attractiveness)(Haley 1996, Ohanian 1990, 1991).
    • 組織の信憑性に特有の要素:威厳(prestige),競争力(competitiveness),親しみ (familiarity)(Vanden Bergh, Soley & Reid 1981)
    • 「親しみ」は顧客が組織から得る価値と組織が顧客に保証してくれるであろう価値とのバランスをよく表す指標である(Haley 1996).

 

参考文献

  • Bobinski, G.S., Jr.,Cox,D., & Cox, A: Retail “sale” advertising, perceived retailer credibility and price rationale. Journal of Retailing, 72, 291-306 (1996).
  • Gass, R.H., & Seller, J.S.: Persuasion, social influence, and compliance gaining. Boston, MA: Allyn & Bacon (1999).
  • Goldsmith, R.E., Lafferty, B.A., & Newel, S.J.:. The impact of corporate credibility and celebrily credibility on consumer reaction to advertisements and brands. Journal of Advertising. 29,43-54 (2000).
  • Haley, E.: Exploring the construct of organization as source: Consumers’ understanding of organizational sponsorship of advocacy advertising. Journal of Advertising, 26, 19-35 (1996).
  • Hammond, S.: Health advertising: The credibility of organizational sources. In M. L. McLaughlin (Ed.), Communication yearbook 10, 613-628. Newbury Park, CA: Sage.
  • Lafferty, B.A., & Goldsmith. R.E.: Corporale credibility role in consumers’ attitudes and purchase intentions when a high versus low credibility endorser is used in the ad. Journal of Business Research, 44, 109-116 (1999).
  • MacKenzie, S.B., & Luiz. R.J.: An empirical examination of the structural anteccedents of attitude toward the ad in an advertising pretesting context. Journal of Marketing, 53,48-65 (1989).
  • Ohanian, R.: Construction and validation of a scale to measure celebrity endorsers’ perceived expertise, trustworthiness, and attractiveness. Journal of Advertising, 19-39-52 (1990).
  • Ohanian, R.: The impact of celevrity spokespersons’ perceived image on consumers’ intention to purchase. Journal of Advertising Reserch, 31, 46-54 (1991).
  • O’Reilly, C.A. III, & Roberts, K.H.: Relationships among components of credibility and communication behaviors in work units. Journal of Applied Psychology, 61, 99-102 (1976).
  • Vanden Bergh, B.G., Soley. L.C. & Reid, L.N.: Factor study of dimensions of advertiser credibility. Journalism Quarterly, 58, 629-632 (1981).

 

出典

Credibility in the 21st century: Integrating perspectives on source, message, and media credibility in the contemporary media
Authors: A. Flanagin, M.J. Metzger, K. Eyal, D.R. Lemus
Communication Yearbook 27 (2003)

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【Credibility for the 21st Century】5. 情報ソースの信憑性に係る様々な要素

様々な要素

  • 1960年代から1970年代の情報ソースの信憑性に関する研究では,メッセージの受け手に信憑性を感じさせる要因の解明に力点が置かれた.
  • 研究者の多くは,信頼性(trustworthiness)と専門性(expertise)が情報ソースの信憑性に係る2大要因であることを明らかにしたが,その他にも力強さ(dynamism)や落ち着き(composure),社会性(sociability)といったものも情報ソースの信憑性に影響があることを明らかにした(Berlo, Lemert, & Mertz 1969,Gass & Seiter 1999, Jurma 1981, McCroskey 1966, Perloff 1993, Whitehead 1968).
  • 情報ソースの信憑性の研究においては,メッセージの受け手に信憑性があると思われる話者は「専門能力あり,信頼感(正直さ,真っ直ぐさ)があり活気があり,落ち着きがあり,気立ての良い人」とされる.

情報ソースとのつながり(linking)

  • 話し手とつながりが持てると情報ソースの信頼性を感じるようになる.専門性には影響を与えない(O’Keefe 1990).
  • 愛想や親しみ,見た目の魅力も同様に信頼性に影響する(McCroskey 1966, Widgery & Webster 1969).

情報ソースとの類似性(Similarity)

  • 話し手に類似性を感じるかが,話し手の信頼性,専門性の判断に大きく影響する(Aune & Kikuchi 1993).
  • ここで言う類似性とは態度の類似性であって,素性や能力,肩書きの類似性ではない(Atkinson, Brady & Casas 1981, Byrne 1969, Worthington & Atkinson 1996).

情報ソースの信憑性への影響度合い

  • 情報ソースの信憑性に係る要因がどの程度の影響力があるかについて研究が行われた.
  • 1950年から1990年にかけて,114本の研究論文が発表された.
  • 情報ソースの専門性が最も影響力のある要因(Wilson & Sherrell 1993).
  • 専門性は他の要素よりも客観的で,情報ソースの信憑性を判断しやすいと認知されている.
  • 信頼性の方が専門性よりも影響度が強いと報告している事例もある(Lui & Standing 1989).

 

参考文献

  • Atkinson, D. R., Brady, S., & Casas, J.M. Sexual preference similarity, attitude similarity, and perceived counselor credibility and altraciiveness. Journal of Counseling Psychology, 28, 504-509 (1981).
  • Aune, R.K., & Kikuchi, T. Effects of language intensity similarity on perceptions of credibility, relational attributions, and persuasion. Journal of Language and Social Psychology. 12, 224-237 (1993).
  • Berlo, D.K., Lemert, J.B., & Mertz. R.J. Dimensions for evaluating the acccpiabilily of message sources. Public Opinion Quarterly, 33,563-576 (1969).
  • Bynie, D. Attitudes and attraction. In L. Berkowitz (Ed.), Advances in experimental social
  • psychology (Vol.4, pp. 34-89). New York: Academic Press (1969).
  • Gass, R.H., & Seller, J.S. Persuasion, social influence, and compliance gaining. Boston, Boston, MA: Allyn & Bacon (1999).
  • Jumia, W.E. Evaluations of credibility of the source of a message. Psychological Reports, 49, 778 (1981).
  • Lui. L.. & Standing, L. Communicator credibility: Trustworihiness defeats expertness. Social Behavior and Personality, 17, 219-221 (1989).
  • McCroskey, J.C. Scales for the measurement of ethos. Speech Monographs, 33, 65-72 (1966).
  • O’Keefe, D.J. Persuasion: Theory and research. Newbury Park, CA: Sage (1990).
  • Perloff, R.M. The dynamics of persuasion. Hillsdale, NJ: Erlbaum (1993).
  • Widgery, R.N., & Webster, B. The effects of physical attractiveness upon perceived initial credibility. Michigan Speech Association Journal, 4, 9-15 (1969).
  • Wilson, E.J., & Sherrell, D.L. Source effects in communication and persuasion research: A
  • meta-analysis of effect size. Journal of Academy of Marketing Science, 21, 101-112. (1993).
  • Worthington, R.L., & Atkinson, D.R. Effects of perceived etiology attribution similarity on client ratings of counselor credibiliy. Journal of Counseling Psychology, 43, 423-429 (1996).

 

出典

Credibility in the 21st century: Integrating perspectives on source, message, and media credibility in the contemporary media
Authors: A. Flanagin, M.J. Metzger, K. Eyal, D.R. Lemus
Communication Yearbook 27 (2003)

 

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【Credibility for the 21st Century】4. 情報ソースの信憑性

情報ソースの信憑性の定義

  • 情報ソースの信憑性の定義:「メッセージの発信する人間を信用するかに関する受け手側の判断」(O’Keefe 1990, Wilson & Sherrell 1993)
  • 情報ソースの信憑性に関する研究は1940年代に始まった.情報ソースの信憑性は説得力のある話者の特性として研究が進められた.
    • 信憑性は第2次世界大戦中に生まれた学問である.アメリカ合衆国政府は,大衆の戦争に対する支持を得るための方法として信憑性に着目.
    • Carl Hovland @Yale大学が「説得理論」の構築を目指し,コミュニケーションと態度変容に関する研究をスタート.

Hovlandの情報ソースの信憑性に関する研究

  • 情報ソースの信憑性を話者の専門性(expertise)と信頼性(trustworthiness)の観点から定義(Hovland, Janis & Kelley 1953).
    • 専門性:あるトピックに関する真実を理解・判断するための話者の能力
    • 信頼性:あるトピックに関する真実を語るときの話者の正直さ
  • 情報ソースの信憑性は,情報の受け手によって認知される特性であるとして研究されてきた.

 

参考文献

  • O’Keefe, D. J. (1990): Persuasion: Theory and research. Newbury Park, CA: Sage.
  • Wilson, E. J. & Sherrell, D. L. (1993):  Source effectes in communication and persuasion research: A meta-analysis of effect size. Journal of Academy of marketing Science, 21, 101-112.
  • Hovland, C. I., Janis, I. L., & Kelley, J. J. (1953): Communication and persuasion. New Haven, CT: Yale University Press.

 

出典

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Authors: A. Flanagin, M.J. Metzger, K. Eyal, D.R. Lemus
Communication Yearbook 27 (2003)

 

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【Credibility for the 21st Century】3. 信憑性研究の歴史

歴史

  •  信憑性に関する研究は「説得プロセス」における要素として注目されて研究が始まった.
  • 当初は,個人や組織の説得に与える要因として情報ソースの信憑性(source credibility)に着目して研究が行われた.
  • 2番目の要因として注目されたのは,情報ソースから発信された「メッセージ自身の信憑性(message credibility)
  • 他にも,特定の情報媒体に着目して情報媒体の信憑性(media credibility)を相対的に分析するという試みも行われた.

現代の情報メディアに対する既存研究の適用可能性

  • インターネット上のコミュニケーションは色々な種類のものが混じっているが,その一つ一つは伝統的なコミュニケーションとして見なすことができるものが多いので,過去の知見を持ち込むことは可能である(Chaffee 2001).
    • ただし,インターネットの信憑性といっても評価すべき対象は様々(例:媒体として見たインターネット,ウェブサイト,ウェブサイトの提供者,特定のウェブページで記載された情報など).
    • この種の多様性が,新しい信憑性研究の難しさでもあり興味深いところでもある.
  • 過去の研究はインターネットの信憑性という新しい課題を研究する上でも非常に有用である.特に,過去に行われた信憑性の概念化および評価に関する研究に対する批判を顧みることが重要であろう(Cronkhite & Liska 1976, Delia 1976).

 

参考文献

  • Chaffee, S. H. (2001): Studying the new communication of politics. Political Communication, 18, 237-244.
  • Cronkhite, G. & Liska, J. (1976): A critique of factor analytic approaches to the study of credibility. Speech Monographs, 43, 91-107.
  • Delia, J. G. (1976): A constructivist analysis of the concept of credibility. Quarterly Journal of Speech, 62, 361-375.

 

出典

Credibility in the 21st century: Integrating perspectives on source, message, and media credibility in the contemporary media
Authors: A. Flanagin, M.J. Metzger, K. Eyal, D.R. Lemus
Communication Yearbook 27 (2003)

 

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【Credibility for the 21st Century】2. ウェブ情報の特徴

ウェブ情報の特徴1: ゲートキーパーの不足

  • 新聞や書籍,雑誌,テレビなどは,一定レベルの事実確認,内容のチェック,編集チェックを受けている.
  • 同様のチェックが,ウェブ情報に対して必ずしも行われているわけではない.
    • 「オンライン新聞サイトや有名なポータルサイトは内容のチェックを受けている」という声もあるだろうが,そういうサイトは広大なウェブ世界ではむしろ少数派.
    • ウェブ情報の大半は非公式な情報であり,どの程度内容の精査がされているのかは不明.
    • 内容チェックを受けなくても情報発信できるということが,正確な情報をウェブで発信しなければという社会的なプレッシャーを低減させる(Jonson and Kaye 1998)

 

ウェブ情報の特徴2: 異種情報の混在

  • 特徴的な例は「広告と非広告情報の混在」(Alexander & Tate 1999, Flanagin & Metzger 2000)
    • 紙出版物と比べて,ウェブ情報は広告とそうでない情報の区別が困難.
    • ウェブページ中で掲載されている広告情報が,ページ作成者が作った広告なのか,違うソースから掲載された広告なのかが分からない時もある(Alexander & Tate 1999)
  • 情報のソースが分からないと,掲載された情報を信頼してよいのか判断がつかなくなる.

 

ウェブ情報の特徴3: 情報発信者に関する評判情報の不足

  • 既存のメディアとは違って,ウェブ上では情報を配信するウェブサイトに対する評判情報というのが乏しい.情報ソースの評判を考慮して情報の信憑性を判断することができない.
    • 例:New York Timesは有名な新聞社だと分かっているので,そのサイトに掲載された情報の質は判断できるが,ウェブ上ではそのように発信者の名前で判断できることが少ない.
  • 「コンピュータは正確である」という思うがために「ウェブ情報は信用できる」と考える人もいる(Johnson & Kate 1998, Witmer 1998)
  • 権威付けがないににもかかわらず,プロフェッショナルに「見える」ウェブサイトが信用されてしまうことも少なくない(Flanagin & Metzger 2000, 2000a, Johnson & Kate 1998, Alexander & Tate 1999, GombdaWeb 1998, Rieh  & Belkin 1998).

 

ウェブ情報の特徴4: 改変の受けやすさ

  • 特定のルートを通じて発行される既存のメディア情報と異なり,ウェブ情報は改変されやすいし,改変されたことを検知するのも難しい (Alexander & Tate 1999)

 

参考文献

  • Alexander, J. E., & Tate, M. A. (1999): Web wisdom: How to evaluate and create inforamtion quality on the Web. Hillsdale, NJ: Erlbaum.
  • Johnson, T. J., & Kaye, B. K. (1998): Cruising is believing? Comparing Internet and traditional sources on media credibility measures. Journalism & Mass Communication Quarterly, 75. 325-340.
  • Flanagin, A. J. & Metzger. M. J. (2000): Perceptions of Internet information credibility. Journalism & Mass Communication Quarterly, 77, 515-540.
  • Flanagin, A. J., & Metzgcr. M. J. (2002a): The role of site features, user attributes, and information verification behaviors on the perceived credibility of Web-based information. Manuscript submitted for publication.
  • GomdaWeb.(1998): Perceptions of reliability. Retrieved July 24,2001, from htlp://www.stanford.edu/class/comm217/reliability/perceptions.
  • Rieh, S.Y., & Belkin, N.J. (1998): Understanding judgment of information quality and cognitive authority in the WWW. Journal of the American Society for Information Science, 5, 279-289.
  • Witmer, D. (1998): Introduction to computer-mediated communication: A master syllabus for teaching communication technology. Communication Education, 47, 162-173.

 

出典

Credibility in the 21st century: Integrating perspectives on source, message, and media credibility in the contemporary media
Authors: A. Flanagin, M.J. Metzger, K. Eyal, D.R. Lemus
Communication Yearbook 27 (2003)

 

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【Credibility for the 21st Century】1. イントロダクション

ウェブの出現により問題になりつつあるオンライン情報の「信憑性」

  • ウェブの登場によって多様な情報に簡単にアクセスできるようになった.
  • ウェブ上には不正確であったり,偏った情報が存在する(Caruso 1999,GomdaWeb 1998, Shaw 1998, Sundar 1998,Null 2000,Ward 1997)
  • だからこそ,既存のメディアとは異なる情報のコントロール,評価,検証が必要となる.
  • ウェブ情報の信憑性に関する問題は研究者にも認識されつつある.

信憑性に関する研究は50年以上の歴史あり

  • 社会学のコミュニケーション学分野では,発信源の信憑性(Source credibility),メッセージの信憑性(Message credibility),メッセージを伝達するメディア媒体の信憑性(Media credibility)といった様々な信憑性研究がなされてきた.
  • これらの知見は,現在問題となっているウェブ情報の信憑性の研究にも活用できるはず.
  • 社会学の研究者もウェブ情報という新しいタイプの情報信憑性について研究し始めている(Flanagin & Metzger 2000, 2002a,Johnson & Kaye 19998, 2000, 2002,Kim Weaver & Willnat 2001,Kiousis 2001,Morris & Ogan 1996,Schweiger 2000,Sundar 1998, 1999,Sundar & Nass 2001)

本書のターゲット

  • ウェブ情報の信憑性を考える上で,過去の信憑性研究を導入する
  • 特に.「発信源の信憑性」,「メッセージの信憑性」,「メディア媒体の信憑性」に焦点を当てる.
  • 以上の信憑性観点から,信憑性の概念の整理,信憑性の評価方法,情報閲覧者/情報提供者のウェブ情報の関わり方などについて議論する.

個人的見解

  • 特に情報検索,データマイニングの研究者は,社会学の分野を敬遠せず積極的に知見を取り入れて,ウェブ情報の信憑性に係る情報検索・閲覧について研究すべき.
  • 信憑性の評価方法が一意に定まることは無い.様々な信憑性評価軸をどのように使うか.
  • 情報学研究者としては,「何らかの軸に基づく信憑性スコアリング」方法を研究することも重要だが,信憑性スコアを使ってユーザに情報をどう閲覧させるかが重要.ユーザ自らが”考える”仕組みを作らないと,表層的なスコアを見て情報の信憑性を判断するようになってしまっては,将来的にはユーザのためにならない.

 

 

参考文献

  • Caruso, D. (1999): Digital commerce: After a year on the credibility trail, a columnist finds that the Internet industry is still dangerously self-indulgent. The New York Times, p. C5.
  • Flanagin, A. J. & Metzger. M. J. (2000): Perceptions of Internet information credibility. Journalism & Mass Communication Quarterly, 77, 515-540.
  • Flanagin, A. J., & Metzger. M. J. (2002a): The role of site features, user attributes, and information verification behaviors on the perceived credibility of Web-based information. Manuscript submitted for publication.
  • GomdaWeb.(1998): Perceptions of reliability. Retrieved July 24,2001, from htlp://www.stanford.edu/class/comm217/reliability/perceptions
  • Johnson, T. J., & Kaye, B. K. (1998): Cruising is believing? Comparing Internet and traditional sources on media credibility measures. Journalism & Mass Communication Quarterly, 75. 325-340.
  • Johnson, T. J., & Kaye, B. K. (2000): Using is believing: The influence of reliance on the credibility of online polical infomiation among politically interested Internet users. Journalism & Mass Communication Quarterly, 77. 865-879.
  • Johnson. T. J., & Kaye, B. K. (2002): Webelievability: A path model examining how convenience and reliance predict online credibility. Journalism & Mass Communication Quarterly, 79. 619-642.
  • Kim, S. T, Weaver. D., & Willnat. L. (2001): Media reporting and perceived credibility of online polls. Journalism & Mass Communication Quarterly, 77, 846-864.
  • Kiousis, S. (2001): Public trust or mistrust? Perceptions of media credibility in the Information Age. Mass Communication & Society, 4, 381-403.
  • Morris. M., & Ogan. C. (1996): Tlie Internet as mass medium.Journal of Communication, 461(1), 39-49.
  • Null. C. (January 2000): Web of lies: Your online credibility faces an uphill battle. PC/Computing, 13,6
  • Schweiger, W. (2000): Media credibility – Experience or image? A survey on the credibility of the World Wide Web in Germany in comparison to other media. European Journal of Communication, 15, 37-59.
  • Shaw, D. (1998, August 6): New media playing field opens ways to more errors. LosAngeles Times, p. A1.
  • Sundar,S.S, (1998): Effect of source attribution on perceptions of online news stories. Journalism and Mass Communication Quarterly, 75, 55-68.
  • Sundar, S. S. (1999): Exploring receivers’ criteria for percepion of print and online news. Journalism & Mass Communication Quarterly, 76. 373-386.
  • Sundar, S. S.. & Nass, C. (2000). Source orientation in human-computer interaction; Programmer,networker,or independent social actor? Communication Research, 27, 683-703.
  • Ward, M. (1997). Surfing for the suckers. New Scientist, 156, 29.

 

出典

Credibility in the 21st century: Integrating perspectives on source, message, and media credibility in the contemporary media
Authors: A. Flanagin, M.J. Metzger, K. Eyal, D.R. Lemus
Communication Yearbook 27 (2003)

 

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