第5期静岡大学若手重点研究者の称号を授かりました

このたび静岡大学学長から第5期静岡大学若手重点研究者の称号を授かりました.第5期静岡大学若手重点研究者の定義は以下の通りです(静岡大学ウェブサイトから引用)

研究実績,学術業績に優れ,本学の次代を担う研究者として目標が高く,独創性を持ち,新しい流れを起こす,意識の高い若手教員.で,各分野において科学研究費補助金等の外部資金獲得状況,著書・論文数及び知的財産(特許等)を,概ね40歳以下の教員の中から総合的に評価し,第5期は15名を選定.

オートメーション・バカ – 先端技術がわたしたちにしていること

  • 著者名:ニコラス・G・カー 著,篠儀直子訳
  • 発行所:青土社
  • 発行年:2015
  • 価格:2,200円

学会仕事で上記書籍の書評を書くことになった.そのうち会誌に載ることになっているが,せっかくなのでここにも載せておこう.


PCやスマートフォンの日本語入力システムに慣れてしまい,いざ手書きで漢字を書こうとしたときに思い出せないという経験をしたことはないだろうか.本書はオートメーション,特にデジタル・オートメーションの負の側面に関して論じた書籍である.

わたしたちは,人間がやっていたことをソフトウェアに代替させることで,作業の効率化や余剰リソースの獲得を期待している.たしかに,デジタル・オートメーションは,快適さや便利さをもたらしてくれる.今や創造的作業や分析的作業も,ソフトウェアによって代替されつつある.ところが,オートメーションは必ずしも良い方向に働くとは限らない.本書では,認知的,文化的,倫理的側面から,デジタル・オートメーション技術がもたらす負の影響を考察している.キャッチーな書名とは裏腹に,中身は医学,ヒューマンファクター,文化人類学,哲学など,様々な分野の研究事例に基づいた議論が展開されており,骨太な内容となっている.

本書は9章から構成されている.第1章では,オートメーションがもたらす便益とリスクについて概説している.第2章では,ラッダイト運動,フォード社の生産ラインのオートメーション化,第2次世界大戦中の砲兵部隊などの例を通じて,オートメーションが労働のあり方,労働者のアイデンティティに与える影響について述べている.第3章では,飛行機のオートパイロットを例にとり,オートメーションが肉体的負担を軽減する一方で,肉体的負担によって維持されていた運動能力,そして認知能力までもを弱体化させる可能性について述べている.第4章では「生成効果」とオートメーションの関係について論じている.エキスパートシステムや検索エンジンといった意思決定支援システムの例を取り上げ,それらの継続的な利用が認知能力や新しい状況への適応能力を低下させる可能性について,認知心理学的現象から説明を試みている.第5章では,電子カルテとその関連システムの導入事例を通じて,デジタル・オートメーションへの過度な信頼が(利用者の感覚も含め)システムの外にある情報への感度を低下させるだけでなく,因果を見いだすスキルを鍛える機会を奪ってしまうことに警鐘を鳴らしている.第6章では,オートメーションによる脱身体化,および世界に対する認識や所属の感覚の変化について述べている.第7章では,作業の正確さと経済性を拡張する「テクノロジー中心のオートメーション」に対するアンチテーゼとして,「人間中心のオートメーション」を提示している.第8章では,オートメーションに潜む倫理的課題について述べ,最終章では,これまでの話を総括しながら,生産の手段ではなく経験の道具としてのテクノロジーを取り戻すことの重要性を説いている.

オートメーションがもたらす負の側面について様々な角度から議論を展開している本書であるが,そのメッセージは「オートメーションには想像以上に様々なリスクがあるので利用を控えよう,あるいはよく考えて使いましょう」といった単純なものではない.たしかに,労働力の節約のためのテクノロジーは魅惑的である.しかし,著者が述べているように,オートメーションは負担を軽減する一方で,知覚や行動,想像力に新たな道を開く機会からわたしたちを遠ざける.

テクノロジーについての決断は,生活や文化のあり方に関する決断でもある.AIやDXといった言葉が世を賑わしているが,それらは本当にわたしたちを幸せにするのであろうか.人間が生きるにあたって何が重要であるか,そもそもわたしたちはどんな存在でありたいのか — 本書はこう問いかけているように感じる.本書のメッセージをアンチ・テクノロジー派の誇大な主張であると退けるのは簡単である.しかし,AI・DXといった技術に過度な期待が集まっている今日だからこそ,情報技術に携わる技術者・研究者は,人と技術の共生的な関係について,すこし立ち止まって考える機会があってもよいのでは,と思う次第である.

DEIM2022で研究成果を発表

2022年2月27日-3月2日に開催された第14回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラムにて,下記10件に関する研究発表を行いました.

  • 織田直也, 山本祐輔:「MoreSteps: 実現可能で意義のある運動目標を設定するためのAIコーチング」
  • 庵谷拓輝, 山本祐輔:「例文提示と修正箇所の指摘による説得性の高い文章執筆のためのインタフェース」
  • 奥瀬雄哉, 山本祐輔:「ウェブ検索における能動的学習を促す問いかけボット」
  • 清水勇祐, 山本祐輔:「プライバシーリスクの範囲と程度を実感させるウェブ検索スニペット」
  • 鈴木雅貴, 山本祐輔:「情報の精査傾向を内省させるためのウェブ検索インタフェース」
  • 永野里佳奈, 山本祐輔:「芸術作品に興味を促すビジュアルストーリーの自動生成」
  • 村田百葉, 山本祐輔:「人工天啓: 悩みに応じた心に響く名言検索エンジン」
  • 中野裕介, 山本祐輔:「ウェブ検索エンジンを用いた地域関連トリビア情報の網羅的抽出」
  • 三林亮太, 上田昌輝, 川原敬史, 松本直彰, 吉村拓真, 相原健郎, 神門典子, 莊司慶行, 中島悠太, 山本岳洋, 山本祐輔, 大島裕明:「文化財の特徴理解に特化したBERTモデル」
  • 浜島聡一郎, 山本岳洋, 山本祐輔, 大島裕明:「健康情報検索における信憑性判断と意見の形成に関する調査」

 

インタラクション2022で研究成果を発表

2022年2月28日-3月2日に開催された第26回 一般社団法人情報処理学会シンポジウム インタラクション2022にて,下記4件に関する研究発表を行いました.

  • 稲垣桃,山本祐輔:「Filter Bubble Cam:フィルターバブルを体感するためのカメラフィルター」
  • 廣田雄亮, 山本祐輔:「輝度と音量コントロールによるオンライン講義視聴の集中力維持支援の検討」
  • 森泉友登, 山本祐輔:「Distributed Ears: ダイバーシティ理解促進のための聴覚拡縮されたサバイバルゲームの設計」
  • 若月祐樹, 山本祐輔:「いつでもブレスト:ウェブ閲覧中におけるブレインストーミング再開タスクの割り込み」

IDRユーザフォーラム2021で企業賞を受賞

11月22日にオンラインで開催されたIDRユーザフォーラム2021で下記研究発表を行い,企業賞を受賞しました.

Yahoo!知恵袋データを活用した悩みの分類と名言推薦
村田百葉,山本祐輔(静岡大学)

IDRユーザフォーラムは,国立情報学研究所の「情報学研究データリポジトリ(IDR)」を通じて提供いただいているデータの提供者と利用者が一堂に会し,直接意見交換できる場を設けることで,研究コミュニティのより一層の発展に寄与することを目的として,2016年度から毎年開催しているイベントです(公式ウェブサイトより).

本年度はYahoo!Japan,楽天などから提供されたデータを活用した発表が39件行われました.今回私の研究室から行った研究発表はYahoo! Japan様,リクルート様,T.M.Community様から評価をいただき,企業賞が授与されました.

わたしの研究計画調書(2018FY-科研費-基盤研究C(特設分野))

科研費セミナーなり申請書作成の書籍など申請書作成のためのヒントはあるものの,結局のところ一番役に立つのは申請書のサンプルである.

これまで色々な方の申請書を閲覧させていただいた.基盤研究Cのプロジェクトが終わったこともあり,役に立つかは分からないが,僕も自分の申請書(2018年度-科研費-基盤研究C(特設分野))をここに公開する.

ダウンロードはこちらから(一部のページは非公開).

落とされない申請書を作るための 「書き方以外」の要素

大学の研究支援関係の部署から科研費獲得セミナーで話題提供して欲しいとの依頼を受けた.書き方の話はURA時代に色々してきたので素材はあるのだが,書き方の話をしてもどうせよく似た話を聞き事になるだろうから今回は「書き方以外」の話をすることにした.せっかくなので,セミナーの資料をここで公開しておこうと思う.

大学教員の道に進む上で考えておくべき事

大学の就職支援関係の部署から,博士後期課程の学生向けの学内配布物に載せる記事の執筆依頼があった.お題は「アカデミアの道に進む上で考えておくべきこと」.紙面スペースが限られていたし,学内の博士後期課程学生にどぎついことを言うのも気が引けたので,以前ウェブにアップした「ポスドクとは何かと聞かれたら」よりも随分ソフトな文章になってしまった.内容も,一般的に良く知られていることなので,あまり目新しさもない.もう少しリアルに書いた方が良かったかな…

最終的に紙面にどう載るかは事務任せなので,オリジナル原稿をここに記しておく.

大学教員の道に進む上で考えておくべき事