浜松にある凱旋門

凱旋記念門の写真(浜松情報Bookのウェブサイト( http://www.hamamatsu-books.jp/ )より)

夏の暑さから逃れるために,引佐の渋川を訪れた.その帰り道,林道の脇に雰囲気のあるレンガ造りの門が立っていることに気付いた.ぼけーっと車で走っていると気付かないくらいひっそりと立っているのだが,明らかにオーラが違う.車を一瞬止め,名称があるかを確かめ見ると,この遺構が「凱旋記念門」であることが分かった.

この凱旋記念門.日露戦争を記念して,この地に建てられたそうだ.いわゆる凱旋門である.明治時代,日本は欧米列強に追いつくべく,富国強兵を推進し,日清戦争・日露戦争といった軍事行動を行ったが,当時は戦争勝利を記念して日本各地でこのような凱旋門が作られたそうだ.ところが,アーチ型の凱旋門として現存しているのは,鹿児島は姶良市にあるものと,ここ浜松は引佐の凱旋門の2つのみ.大変貴重な歴史遺構である.

引佐の渋川という地区はサワガニが生息するようなきれいな川をもつ山村で,人気(ひとけ)はあまりない.こんな小さな山村でも凱旋門が建てられたことから,当時の日本がいかに日露戦争の勝利に沸き立っていたのか,その高揚感が伝わってくる.

用が済んだら忘れられる存在

まわりに石っこひとつないこの場所にこんなデカい石が置かれているということは,何かを支えたり挟んだりするために誰かが持ってきたのだろう.

使い終えたら,使う前はすごく意識していたことを忘れられてしまう悲しさ.用済み切り捨て.怖いなぁ.

The Vannevar Bush Best Paper Award 授賞

デジタルライブラリに関して最も権威のある国際会議であるJCDL2020において発表した下記論文が,the Vannevar Bush Best Paper Awardを授賞しました.

Yusuke Yamamoto and Takehiro Yamamoto: “Personalization Finder: A Search Interface for Identifying and Self-controlling Web Search Personalization”, Proceedings of the 20th ACM/IEEE on Joint Conference on Digital Libraries (JCDL 2020), pp.37-46, China, Xi’an, August 2020 (Full Paper 33/106 = 31.1%).

The Vannevar Bush Best Paper AwardはJCDL2020で発表された査読付き論文のうち,最も優れた論文に与えられる賞です.

発表時のスライドはコチラから閲覧可能です.

JCDL2020で研究成果を発表

8月1日から5日にかけて開催されているJCDL2020(The 20th ACM/IEEE on Joint Conference on Digital Libraries)にて下記論文を発表しました.この研究は兵庫県立大学社会情報学部の山本岳洋准教授との共同研究の成果です.

Yusuke Yamamoto and Takehiro Yamamoto: “Personalization Finder: A Search Interface for Identifying and Self-controlling Web Search Personalization“, Proceedings of the 20th ACM/IEEE on Joint Conference on Digital Libraries (JCDL 2020), pp.37-46, China, Xi’an, August 2020 (Full Paper 33/106 = 31.1%).

発表スライドは以下となります.

あなたがAIよりも優れている点をアピールせよ

スポットで講義をしている大学院の授業でレポート課題を課した.今回のレポートは学生に自分の頭で考えてほしかったので,考える系のレポートを出題した.以下レポート課題の内容である:

あなたは現在就職活動中であるとする.あなたは,採用人数が1名の企業を志望しており,この度その企業から最終面接に呼ばれたとする.事前情報によると,最終面接に残った応募者のうち,あなた以外はすべてAI(人工知能)であることが分かった.志望企業から内定を勝ち取るためには,「AIよりもあなたを採用した方が企業にとってメリットがある」ことを採用担当にアピールする必要がある.生産性の観点から,あなたがAIよりも優れている点を,A4用紙0.5〜1ページ程度でアピールせよ.

数十人の受講生から方向性も質も多種多様なレポートが寄せられた.対象とした業界についても,情報系大学院でもっとも就職する人が多いであろう情報サービスだけでなく,コンサルティング,マーケティング,製造業,菓子メーカー,芸能,保険,医療,介護,など様々な業界が取り上げられていた.

レポートとして一番の読みどころである「AIよりもあなたが優れている点」については,類型化すると下記のような主張が挙がった:

  • 問題定義
  • 機械学習に用いるデータの設計・準備
  • フレーム問題への対処
  • 人間(お客)との円滑なコミュニケーション(例:結果の説明)
  • 少量のデータからのスキルや知識の学習
  • ユーモア等の「創造性」
  • 暗黙知の学習
  • 人間との協調作業
  • 倫理観
  • AIそのものの設計,AIに電力を供給する(させない)

どれも学生に鍛錬して欲しい重要な能力だと思うが,いくつかの項目については,最先端の機械学習・人工知能研究のトピックだったりする.

計算機にユーモアを理解させる,あるいは生成させる研究は,自然言語処理で時々見かける.例えば以下のような論文.

  • YANG, Diyi, et al. Humor recognition and humor anchor extraction. In: Proceedings of the 2015 Conference on Empirical Methods in Natural Language Processing (EMNLP). 2015. p. 2367-2376.
  • ZHANG, Hang, et al. Let’s be Humorous: Knowledge Enhanced Humor Generation. In: Proceedings of the 58th Annual Meeting of the Association for
    Computational Linguistics (ACL). 2020.

人工知能の倫理観についても盛んに研究されていて,自動運転車の倫理を扱ったMITのMoralMachineは代表的な研究.ブラックスボックスな機械学習技術によって得られた結果の説明については,Explanable AIというホットな研究分野が立ち上がっている.少量のデータからのスキル獲得については,(これからますます盛んになるであろう)強化学習という研究分野がある.

学生が思っている以上に,人間にしかできないと思われている処理を計算機ができるようになる可能性がある.社会に浸透するまでにはもう少し時間がかかるかもしれないが,使いどころをうまく決めることができれば,人間が行うタスクを人工知能技術によって置き換えられることは可能であろう.情報系学部で学ぶ学生には,

  • 計算機は何ができるのか
  • これまで人間が行ってきたタスクの中で,計算機で代替できる,代替すべきものは何なのか
  • 計算機によるタスクの代替を行うには,どのような作業が必要なのか

などを考えられる人材になって欲しい.

なぜ関西と関東の鰻の焼き方が違うのか

土用の丑の日ということで,鰻を食べに出かけた.浜松は関西風の焼き方をする店と関東風の焼き方をする店が混在している.関西出身の僕としてはつい関西風の鰻を求めてしまうのだが,今回はあえて関東風の焼き方をするお店を選んだ.奥浜名湖にある「うなぎの千草」である.関東風の焼き方ではあるが,大変満足した.やはり鰻は美味しい.

さて,鰻の焼き方の違いについてである.これまで鰻の焼き方の違いは考えることはあっても,なぜ関西と関東で焼き方が異なるのかについては考えたことがなかった.

  • 関東は,鰻を焼いてから仕上げに蒸す
  • 関西は,仕上げに蒸す行程は入れず,時間をかけて焼く

実は鰻の開き方(関西は腹開き,関東は背開き)や焼く際の串の打ち方(関西は金串,関東は竹串)も異なるそうなのだが,もっとも大きいな違いが「蒸す行程」.蒸す行程を入れず,焼き時間が長い関西風は「外はパリッ,中はフワッ」とした食感になる.これが関西風の鰻が好きなポイントなのだが,なぜ焼き方に違いが生まれたのか.

調べてみると,蒲焼き割烹うな繁のウェブサイトに解説があった.もともと鰻の蒲焼きの焼き方はすべて関西風,つまり蒸す行程はなかったのだが,明治以降,蒲焼き調理法に蒸す行程が入ったらしい.関西と関東で調理法が異なる理由としては「脂の好き嫌いで関東は蒸すようになった」という説もあるらしいが,うな繁さんのウェブサイトでは違う説を唱えている.「仕上げ前に蒸す」ことで,ある程度味の劣化を押さえつつ,しばらくその状態でキープしておくことができるそうだ.この処理によって,お客から注文が入る前あらかじめに蒸す工程まで終わらせておき,注文が入ってから最後の仕上げの焼きを入れることで,注文から食事のサーブまでの時間を短くすることができる.待ち時間が長いことを嫌う傾向にあった江戸庶民への対応から,「蒸す」調理,蒸しに適した「背開き」が行われるようになった.うな繁さんはそう推測している.なるほど!

鰻屋さんの経営的,技術的視点から考察がされていて,大変読み応えがある記事だったので,興味のある方は蒲焼き割烹うな繁のウェブサイトをご覧あれ.

田舎の学問より京の昼寝

ある本を読んでいたら「田舎の学問より京の昼寝」という諺に出会った。恥ずかしながらこの諺を知らなかったのだが、意味を調べてみるとなかなか面白かった(字面通りなのだが)。

要するに「都会にはいろいろなもので溢れているから、田舎で一生懸命書物を勉強するよりも、街を見て歩くだけでもいろんな知識を多く深く学べるものだ」という趣旨である。田舎で大学受験勉強をし、その後都会で学び、そして今地方に暮らしている身としては、なるほど共感できる諺である。高校生の頃、大学を目指してこれと信じた参考書を勉強していたが、大学に合格し「京」に出で様々な人やことに触れ、こんな世界があったのかと驚いたものである。高校時代に比べて明らかに勉強しなかった大学時代だが、いろんな人や風景、文化に出会った大学時代の方が明らかに知性が刺激された(だから都会の方が地方より良いということでもない)。

さて、この諺で感じ入ったのは、地方よりも都が知性を刺激する知的文化に溢れているという主張よりも、「京で昼寝をする(人の)心の余裕」である。地方で過ごした高校時代を思い返してみると、知力をつけるため必死になっていた。頼るものが参考書しかなかったから、一心不乱に参考書を勉強した。知力を身につけるためには、それが唯一の方法だと思っていた。ところが、「京」での学びはガツガツしていないかった。それは、ゆっくりとした時間の中のこってりとした学びであった。そのように学ぶことを好しとされた。今思うと、地方にいた高校時代は

  • 知識は知力や教養をつけるきっかけに過ぎないこと、
  • 知識だけを入れても仕方がないということ(教養があることと知識が豊富であることは異なること)、
  • 知力や教養をつけるためにはゆっくりじっくり考えることが必要であること

をまったく分かっていなかった。狭い世界に住む、知識偏重主義者であった。

「田舎の学問より京の昼寝」という諺は、知力・教養を身につけるには、知的な文化環境だけでなく、心のゆとりが重要であることを考えさせてくれる。

かん字

書店の子供コーナーで「小2 かん字」というタイトルの本を見かけた.一瞬何の本か分からなかったが,隣に「小3 漢字」という本があったので,漢字のテキストであることが分かった.

小学校2年の段階では「漢」という字を習っていないから「かん字」という表記にしたのかと思ったのだが,妻から「ここに読解っていう本があるよ」と言われ,絶句.本のタイトルは「小1 読解」である.小学校1年生は「読」も「解」も習わないであろう.ましてや,「読解」ということばを知るはずがない.「どっかい」と書かれても分からない.

学年に応じた言葉を使用するというルールが一貫していないことに違和感を感じる.漢字を「かん字」とするならば,なぜ読解は「どっかい」や「こくご」,「よむ」などにしなかったのだろうか.モヤモヤが収まらない.

夏近し

朝近所を歩いていると,花壇の壁にセミの抜け殻がくっついていることに気付いた.セミの鳴き声はまだ聞こえ始めていないが,早くも地上に出て飛び立ったセミが現れたようだ.

ジメジメした日が続いているが,もうすぐ夏が始まりそうだ.

沖縄のミツバチ

ミツバチの飼育数が最も多い都道府県はどこかご存じだろうか?答えは沖縄だそうだ.気温が下がる冬場はミツバチの繁殖が止まるが,一年中温暖な沖縄はいつでも養蜂ができるそうだ.

沖縄がハチミツで有名とは聞いたことがないので,不思議に思ったのだが,沖縄では養蜂の主たる目的がハチミツではないらしい.では,何目的か.答えは,ミツバチを農家に販売するためである.カボチャやヘチマのような植物は,雄花から雌花への受粉が必要となる.こういった植物の受粉に一役買っているのが,ミツバチである.ミツバチは農家の方々にとってなくてはならない労働力.この労働力を売るのをメインしているのが,沖縄の養蜂家なのだ.

ミツバチといえば蜂蜜しか頭になかったので,この話はかなり印象的だった.大量のミツバチに受粉というマイクロタスクを投げる農家さん.ウェブ上のクラウドソーシングとちょっと重なって見えた.