テレキャスター警察

とある方に,Twitterに「テレキャスター警察」というハッシュタグがあることを教えてもらった.色はバタースコッチもしくはサンバースト,ピックアップはシングルコイルのみを是として,それ以外のテレキャスターを「違法」として切っていくハッシュタグである.まったく知らなかった.

過去の投稿を眺めてみると,多種多様な驚きテレキャスターがたくさん掲載されている.ピックアップをハムバッカーに変えたテレキャスターなんて甘い方.中には「えん罪」じゃなかろうかというギターもあったり.なかなか楽しめるコンテンツだった.

52年製Fenderテレキャスターの配線

大学生のときに,Fender USA テレキャスター52年レプリカを購入した.そのギターについて,衝撃的な事実に気付いた.知っている人からすると,なぜ今それに気付くのかと思う内容であろう.

テレキャスターといえば,ジャキジャキとした音が魅力的なギター.山下達郎さん好きとしては,テレキャスターによるカッティングがたまらない.

ということで,あの音で演奏したくてテレキャスターを使うわけだが,購入したときから,あの音が出せなく悩んでいた.フロントピックアップの音がどうしても納得がいかない.なんとか音を近づけようと,弦を替えたりピックをかえたりアンプの音作りを変えてみたりと,いろんな工夫をしてきた.しかし,状況はまったく改善されず.ギターには個体差があるので,それが原因,それも個性だと受け入れてきた.

購入から10数年たった今日,問題の原因はコンデンサーではないかとふと思った.テレキャスターの高音ジャキジャキを活かすために,コンデンサに工夫を凝らすことが知られている.僕のギターもコンデンサをつけかえれば音が変わるのでは,そう思うに至った.

そこで,ギターの型番をちゃんと調べて,あらためて配線をしらべたところ,衝撃的な事実が判明.僕のもっている52年製テレキャスターは,よくあるピックアップセレクターとは全然異なる配線になっていたのである.普通は,3段階のセレクタであれば,

  • 一番左:フロントピックアップ
  • 真ん中:フロントとリアピックアップのミックス
  • 一番右:リアピックアップ

を使う設定になっている.ところが,52年製テレキャスターは,

  • 一番左:フロントピックアップ(トーンゼロ,トーン調整無効)
  • 真ん中:フロントピックアップ(トーン調整有効)
  • 一番右:リアピックアップ(トーン調整有効)

という設定なのである.フロントピックアップのもこもこした音はこれが原因であった.真ん中のピックアップセレクタの音が一番お気に入りを出していたのだが,まさにそれが僕が求めていた音が出る設定だったのである.

こんなことはテレキャスター好きからしたら常識かと思われるので,なんと恥ずかしいことか.購入時の説明書袋を開けてみると,「ビンテージタイプ配線」から「スタンダートタイプ配線」に戻す方法が書かれた紙が入っているし,変更のために必要となるコンデンサまでご丁寧に同封されている.

これに10何年間も気付かない馬鹿な僕.でも,謎が解けてすっきりした.

パンダコパンダ

高畑勲氏が監督,宮崎駿氏が脚本・原画等を手がけた作品に「パンダコパンダ」という作品がある.たまたまこの作品を見る機会を得た.

この作品の主題歌(ミミちゃんとパンダコパンダ),サビが大変キャッチーで中毒性がある.作品の内容は覚えていなくても,この歌のサビだけは耳に残っていた.パンダコパンダを見る機会を得たので,この主題歌をじっくり聴いてみたのだが,サビの歌詞が自分が思っていた歌詞と違ってショックを受けた.

昔からサビの歌詞は「パンダコパンダコパンダ」の繰り返しかと思っていた.作品のタイトルも「パンダコパンダ」だからだ.ところがアニメーションを見ながらサビをよく聴いてみると,「パンダ,パパンダ,コパンダ」が正解らしい.ややこしい.

確かに作中には,パン(子どものパンダ)の父親のような役割のパパンダというキャラクタが登場する.しかし,コパンダは登場しない.登場する子どものパンダはパンである.

このサビには納得がいかない.

LIFO

私が所有するパンツ集合を\(P=\{p_1, p_2, …, p_N\}\)とする.パンツの総数は\(N\)である.

あるとき,洗濯物をためてしまった.そのため,今自分が着ているパンツ\(p_i\)と唯一洗濯済みのパンツ\(p_j\)以外,他のパンツが同時に洗濯機に入ってしまったとする.

お風呂に入った後,唯一無二のパンツ\(p_j\)を着る.そして,使用済みのパンツ\(p_i\)を洗濯機に入れ,他のパンツと一緒に洗濯機を回す.洗濯済みパンツのストックが無くなってしまうが,幸い,洗濯したパンツは次の日のお風呂までには乾く.

洗濯済みのパンツが無くなったら危機である.この日から心を入れ替えて,毎日忘れずにパンツを洗濯することに心に決める.

ところで,我が家の洗濯済みパンツ入れは小さなカゴである.カゴに洗濯済みのパンツが積み上がっていく.一番最後に入れられたパンツが一番最初に取り出される.つまり,カゴは”Last in, first out”のスタック構造になっている.これを踏まえて,先の危機の行く末を考えてみる.


唯一無二のパンツ\(p_j\)に履き替えた私は,お風呂に入る前に着ていたパンツ\(p_i\)を含めた\(N-1\)枚の使用済みパンツを洗濯し,乾いたパンツをランダムにカゴに入れる.たまたまカゴの一番上に積まれたパンツを\(p_k\)とする.

次の日,お風呂に入る.お風呂を出た私はカゴの一番上にあるパンツ\(p_k\)を着て,使用済みパンツである\(p_j\)を洗濯する.このとき洗濯する(私の)パンツは\(p_j\)1枚である.洗濯し乾いたパンツ\(p_j\)をカゴに入れる(この日の活動をSTEP 1と呼ぶ).

また次の日,お風呂に入る.お風呂を出た私はカゴの一番上にあるパンツ\(p_j\)を着て,使用済みパンツである\(p_k\)を洗濯する.このとき洗濯する(私の)パンツは\(p_k\)1枚である.洗濯し乾いたパンツ\(p_k\)をカゴに入れる(この日の活動をSTEP 2と呼ぶ).

さらに次の日は,STEP 1に戻ることになる.そしてSTEP 2,STEP 1という流れが繰り返される.つまり,パンツは合計\(N\)枚あるにもかかわらず,私は2枚のパンツのみを毎日交互に履き替えていることになる.

ミニバッチ学習

及川賢治・竹内繭子作の「まるさんかくぞう」という絵本がある(出版社:文溪堂 ).上の写真のように,1ページごとに3つのオブジェクトの名前と絵本が描かれている.

  • さんかく,ぞう,まる
  • ぞう,ぞう,しかく
  • さんかく,まる,しかく

といった調子である.この構成が絵本の最初から最後まで続く.ちなみにこの本に登場するオブジェクトは「まる」「さんかく」「しかく」「ぞう」「とり」「かお」「ぼうし」「ふね」「ばす」「れもん」の10種類である.

子どもはこの絵本をめくる毎に3つのオブジェクトを見て,3つのオブジェクトが何かを読み手から音で聞く.オブジェクト認識のためのルールを学習するために,バッチサイズが3のミニバッチ学習を行うのである.

絵本の作者が各ページに配置するオブジェクトをどのように決めたのかは分からないけれども,各バッチには子どもが楽しみながらも効率よくオブジェクト認識ルールを学習できるよう,巧い具合にオブジェクトが選ばれている(ような気がする).

世間は深層学習が大流行りだが,子どもたちの学習が楽しく効果的に進むコンテンツを作るために,機械学習をうまく利用するといった事例があっても面白いと思う

熱量

三島由紀夫 vs 東大全共闘 – 50年目の真実」を観に出かけた.期待していたとおりの内容で,討論の全内容を聴けたわけではないが,2時間程度の時間で歴史と三島由紀夫の天才ぶり,ユーモアを楽しめた.内容はネタバレになるので書かないが,内田樹氏の語る三島コメントが印象的だった.

昔から全共闘の活動の歴史に興味を持っていた.当時の学生運動に参加していた学生の「熱量」に魅せられるのである(同時に,運動に関わらず冷めた目で運動を見ていた学生にも興味がある).なぜ当時の学生はあそこまでの社会変革に熱量を持てたのだろうか.もちろん時代背景もあるのだろうが,今の時代の学生(そして僕)は当時に負けないくらいの熱量を持っているだろうか.今の学生(そして僕)が当時にタイムスリップしたら,同じような熱量を持てただろうか.

熱を帯びなければならない.

水筒の蓋

水分をこまめに取れるように水筒を購入した.ドウシシャのmoshという商品である.水筒なのに牛乳瓶のような形をしているところがなんとも愛らしい.機能としては一般的な水筒と同じく保温機能があるだけで,蓋を取って水を入れて飲む.それだけである.

機能的にも見た目的にも十分満足なのだが,一点だけ気に入らないのが「蓋に印字された文字」である.蓋のてっぺんにデカデカとびっくりマークが書かれているのだ.これさえ無ければパーフェクトだったのに…

なぜびっくりマークなのか?牛乳瓶のような姿をしているのに,手に取って開けてみるとそれは水筒だから?その驚きはびっくりマークの印字で表現しなくても,手に取った人が体験として驚けばそれで良いと思うのだけど.説明してしまったらナンセンス.短歌と同じである.

浜松にある凱旋門

夏の暑さから逃れるために,引佐の渋川を訪れた.その帰り道,林道の脇に雰囲気のあるレンガ造りの門が立っていることに気付いた.ぼけーっと車で走っていると気付かないくらいひっそりと立っているのだが,明らかにオーラが違う.車を一瞬止め,名称があるかを確かめ見ると,この遺構が「凱旋記念門」であることが分かった.

この凱旋記念門.日露戦争を記念して,この地に建てられたそうだ.いわゆる凱旋門である.明治時代,日本は欧米列強に追いつくべく,富国強兵を推進し,日清戦争・日露戦争といった軍事行動を行ったが,当時は戦争勝利を記念して日本各地でこのような凱旋門が作られたそうだ.ところが,アーチ型の凱旋門として現存しているのは,鹿児島は姶良市にあるものと,ここ浜松は引佐の凱旋門の2つのみ.大変貴重な歴史遺構である.

引佐の渋川という地区はサワガニが生息するようなきれいな川をもつ山村で,人気(ひとけ)はあまりない.こんな小さな山村でも凱旋門が建てられたことから,当時の日本がいかに日露戦争の勝利に沸き立っていたのか,その高揚感が伝わってくる.

もやしとフォアグラ

夏休みの「子ども科学相談」のラジオで「もやし」についての話があった.まったく知らなかったのだが,「もやし」とは穀類や豆類の種子を人為的に発芽させた新芽の総称を表すものだそうだ.てっきりトマトや茄子のように,もやしという名称の野菜があるのかと思っていた.

科学相談の内容は,「もやしがどのようにできるのか」についてであった.植物は光合成をするために光が必要となるが,土の中で発芽した植物は光を得るために地中に出る必要がある.そのため,植物は茎を伸ばすのである.もやしはこの性質を利用し育てられる.光を与えないよう暗室で育てることによって,葉も出させず色も付けさせず,茎だけ伸ばさせる.もやしとしては,地中に出て光を浴び,光合成をするがために,種子に蓄えられた限られたエネルギーを使って必死に茎を伸ばす.私たち人間は,もやしが食べたいがため,己の欲望のために,もやしに酷な仕打ちをするのである.

どこかで聞いたことのあるような話である.フォアグラである.フ脂肪肝をもつガチョウを育てるために,強制給餌を行う.フォアグラに反対する人はベジタリアンが多いという記事もあるが,捉え方によっては,もやしの作り方はフォアグラ反対派のベジタリアンにも割とショッキングではなかろうか.

 

なぜ関西と関東の鰻の焼き方が違うのか

土用の丑の日ということで,鰻を食べに出かけた.浜松は関西風の焼き方をする店と関東風の焼き方をする店が混在している.関西出身の僕としてはつい関西風の鰻を求めてしまうのだが,今回はあえて関東風の焼き方をするお店を選んだ.奥浜名湖にある「うなぎの千草」である.関東風の焼き方ではあるが,大変満足した.やはり鰻は美味しい.

さて,鰻の焼き方の違いについてである.これまで鰻の焼き方の違いは考えることはあっても,なぜ関西と関東で焼き方が異なるのかについては考えたことがなかった.

  • 関東は,鰻を焼いてから仕上げに蒸す
  • 関西は,仕上げに蒸す行程は入れず,時間をかけて焼く

実は鰻の開き方(関西は腹開き,関東は背開き)や焼く際の串の打ち方(関西は金串,関東は竹串)も異なるそうなのだが,もっとも大きいな違いが「蒸す行程」.蒸す行程を入れず,焼き時間が長い関西風は「外はパリッ,中はフワッ」とした食感になる.これが関西風の鰻が好きなポイントなのだが,なぜ焼き方に違いが生まれたのか.

調べてみると,蒲焼き割烹うな繁のウェブサイトに解説があった.もともと鰻の蒲焼きの焼き方はすべて関西風,つまり蒸す行程はなかったのだが,明治以降,蒲焼き調理法に蒸す行程が入ったらしい.関西と関東で調理法が異なる理由としては「脂の好き嫌いで関東は蒸すようになった」という説もあるらしいが,うな繁さんのウェブサイトでは違う説を唱えている.「仕上げ前に蒸す」ことで,ある程度味の劣化を押さえつつ,しばらくその状態でキープしておくことができるそうだ.この処理によって,お客から注文が入る前あらかじめに蒸す工程まで終わらせておき,注文が入ってから最後の仕上げの焼きを入れることで,注文から食事のサーブまでの時間を短くすることができる.待ち時間が長いことを嫌う傾向にあった江戸庶民への対応から,「蒸す」調理,蒸しに適した「背開き」が行われるようになった.うな繁さんはそう推測している.なるほど!

鰻屋さんの経営的,技術的視点から考察がされていて,大変読み応えがある記事だったので,興味のある方は蒲焼き割烹うな繁のウェブサイトをご覧あれ.