ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも 行き詰まりを感じているなら、 不便をとり入れてみてはどうですか?

本作の表紙(Amazon.co.jpより)

ここ1ヶ月くらい不便益について考えてみてはモヤモヤしている。自分なりにある程度考えるまでは不便益本は読まないでおこうと思っていたのだが、どうもモヤモヤが取れないので「不便から生まれるデザイン」を読んでみた。やっぱりモヤモヤが残った。ここまできたらもはや解禁ということで、川上浩司さんの不便益本の2冊目「ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも 行き詰まりを感じているなら、 不便をとり入れてみてはどうですか?」を読んでみた。

前作では、不便益という概念をまとめるために試行錯誤されている感が本全体から伝わってきたが、本作はコラム・エッセイ的要素が削られ、ずいぶんと不便益が整理された印象を受けた(文章も平易になった)。おかげで僕の頭の中も大分整理することができた。

以下は本作のメモを記す。

不便益の定義(ふたたび)

  • 不便益:不便から得られる益
  • 便利:労力が少ないと感じられる
    • 物理的労力:手間がかかる
    • 心理的労力:認知リソースを割く

不便益(不便がもたらす効用)のタイプ

客観的な益

  • 機会の拡大(例:紙の辞書をめくっている途中で目的以外の単語に「おっ」と気づける)
  • 工夫の余地の発生(例:300円の遠足おやつ制限が、選んだおやつの価値を上げる)
  • 対象系の理解促進(例:触ったり使ったりすることで、仕組みが分かる)
  • 習熟を許す
  • 利用者に主体性を持たせる(例:車の手動運転は、自動運転に比べてドライバーに責任を持たせる)
  • スキル低下を防ぐ

主観的な益

  • 動機付け
  • 安心感
  • オレだけ感
  • 自己肯定感
  • 嬉しい

 不便益の発想を支援ツール(不便益事例から抽出)

不便益システムの発想支援ツールとして、不便益事例から不便益の原理や不便益の効用を整理。それらをイメージしやすいものにしたのが、以下の不便益原理カードと益カード:

 不便益原理カード

  • 限定せよ
  • 刺激を与えよ
  • 劣化させよ
  • 危険にせよ
  • 大型にせよ
  • 情報を減らせ
  • 操作数を多くせよ
  • 操作量を多くせよ
  • 時間がかかるようにせよ
  • 無秩序にせよ
  • アナログにせよ
  • 疲れさせよ

不便益の益カード

  • 主体性が持てる
  • オレだけ感がある
  • 工夫できる
  • 安心・信頼できる
  • 発券できる
  • 能力低下を防ぐ
  • 対象系を理解できる
  • 上達できる

便利の害に関する思い

  • 便利が指向されたのモノ・コトの多くは、「しなくてよい」がいつのまにか「させてくれない」に変わっている
  • 人と環境のつながりにおいて、環境を人に従わせるのは気持ちのよいことかもしれない。しかし、人が「変わらずにすむ」と喜んでいる場合ではなく、「変われずにいさせられている」だけかもしれない

不便益と関連する活動

    • 自分ではゴミを拾い集められないが、子どもたちのアシストを引き出しながら結果としてゴミを拾い集めてしまうようなゴミ箱ロボット(YouTube
  • 西本一志氏@北陸先端科学技術大学院大学
    • 妨害要素や不要物・不自然さ・不自由さを活用して、人々の日常的な知的活動を支援する技術を研究開発
    • Gestalt imprinting methodワープロ:ときどき偽りの漢字を混入させ、これに気づいて正しい漢字に修正しないと文書保存ができないワープロ
  • 夢のみずうみ村
    • バリアアリー:デイサービスセンターに段差・坂・階段などの日常的なちょっとしたバリアを設置
  • 次世代車いすCOGY
    • 歩行が難しい方でも、どちらかの足が動かせれば自分の両足でペダルをこげる可能性に着目。自分の足で動かす楽しさ + リハビリ効果
  • 仲谷善雄氏@立命館大学
    • あえて詳細なルート情報を提供しない観光ナビシステム
  • ふじようちえん
    • ちょっとした不便を子供の体験、自らの行動と思考という成長につなげる
  • シェアードスペース
    • 「安全を担うのは、道ではなく、行政でもなく、あなたです」という都市設計コンセプト
    • 実験スペースに指定された道路では、交通ルールが単純化され、信号機も標識も路面標示も撤去されている。
    • 誰もがお互いに配慮しながら、アイコンタクトで慎重に移動しなければならない→負傷者事故の減少に寄与

感想

自分の中で不便益という概念が大分クリアになった。著者は明には書いていないが、本書を読んでいると「便利すぎるのは良くない!できるなら何でも不便にした方がよい!」という熱い思いを感じる。

不便益の権化の方がそう主張するのはある意味納得できるが、不便益の考え方をデザインに活かす場合は、「単に不便にする」「不便を受け入れよう」では駄目だと改めて思った。不便益をデザインに活かすためには、不便の益を押さえつつ、不便益を埋め込んだモノやコトをどうやってgive upさせずユーザに使ってもらうか、使わせるか、「不便益を溶け込ませるデザイン技法」を考える必要があるのではと思っている。

余談:本文中で「富士山エスカレーター」「睡眠学習機」の例が出てくるが、これを便利だと思う人が意外に多そう。想像すると悲しくなる。

 

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