仕掛学

電柱柱のミニ鳥居(フォト蔵の@kyu3さんの写真より)

上の写真のように、街を歩いているとあれっと思うところに小さな鳥居が設けられていることがある。これ、「神聖な場所で悪い行いをしてはいけない」という感情を抱かせることで、立ち小便やゴミのポイ捨てを防ぐ工夫だそうだ。

このように、ある仕組みを入れることで、本人が意識しているか否かにかかわらず、人の行動を自然と違う方向に向かわせる方法を「仕掛け」と呼び、仕掛学を研究されている方がいる(松村真宏さん@大阪大学)。

この仕掛け学、僕がやろうとしている気づきの情報インタラクションデザインにも非常に関係があるので、松村真宏さん著「仕掛学〜人を動かすアイデアの作り方」を読んでみた。以下、簡単なメモを記しておく。


 仕掛学とは

  • 仕掛けとは、魅力的な行動の選択肢を増やすことで、自ずとそちらの行動が選ばれるように仕向ける方法論である。仕掛けられる人の行動を変化させること問題解決を図る方法論であり、仕掛けそのものによって問題解決を図るものではない
  • 「したほうが良い」と直接伝えても効果がないことは明らかなので、「ついしたくなる」ように間接的に伝えて結果的に問題を解決することを狙うのが仕掛け

仕掛けを定義する要件

  • FAD要件
    • 公平性(fairness):誰も不利益を被らない
    • 誘因性(attractiveness):行動が誘われる
    • 目的の二重性(duality of purpose):仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる
  • 誘因性は行動を誘う仕掛けの性質であり、行動変容を強制するものは仕掛ではない。仕掛けが行動の選択肢を増やしていること、および自分の意志で自由に行動を選べることが必要である
  • 仕掛けが対象としている本当の問題は明示されていないことが多い。問題を意識することなく興味の赴くままについ行動してしまう 

良い仕掛け

  • 良い仕掛けと悪い仕掛けを分けるのは、仕掛ける側と仕掛けられる側の双方の目的を知ったときに「こりゃ一本採られた」と笑顔になるかどうか
  • 行動と解決する問題の関係が一見すると無関係に見えるときほど、うまい仕掛けになる(仕掛けの副作用性)
  • 仕掛けの副作用性は、行動の多義性を利用することで生まれる

強い仕掛けと弱い仕掛け

  • 仕掛けに対する反応の強弱は、仕掛けから発生する「便益」と「負担」によって特徴付けられる
  • 便益:仕掛けによってもたらされる主観的な感情
  • 負担:仕掛けによって行動を変えるときにかかる体力的、時間的、費用的な負担

仕掛けの原理

  • 物理的トリガによって心理的トリガを引き起こされ、行動に変化が生じる
  • 物理的トリガ:知覚される仕掛けの物理的な特徴
  • 心理的トリガ:人の内面に生じる心理的な働き
  • 詳細なトリガの分類は書籍もしくは論文を参照
トリガの分類(Springerのサイトより)