ノスタルジックな当たり屋情報

連休をまったり過ごしていると、妻の職場から妻に電話がかかってきた。「浜松市に当たり屋集団が来ているから気をつけてください」とのことだった。てっきり仕事の電話かと思っていたのに、仕事とはまったく関係のない内容だったから拍子抜けだった。こんな内容をなぜわざわざ職場が連絡してくるのかに関しても違和感を覚えたが、いかんせん内容が胡散臭い。情報ソースについても不明。そもそもドライブレコーダーがある今日、当たり屋なんて仕事になるのか。

すぐさま浜松市ホームページや警察のホームページを見たが、何も情報はない。Twitterで検索してみると、「浜松市に当たり屋が来てるから気をつけて」的なツイートが散見された。危険なナンバープレートの一覧が記された怪文書の画像もアップされている。ますます胡散臭い。

ウェブ検索で当たり屋を調査してみた。どうやら昔からあるデマ情報だそうだ。80、90年代年代に出回ったデマらしい。案の定、怪文書の内容もよく似たものだった。なぜ、今このタイミングでこのデマ情報が流れるのか、発信源はどこだったのかだろうか。立命館大学サトウタツヤさんの調査によると、この当たり屋デマ情報は数年に一回程度発生しているそうだ(サトウタツヤさんのHPの見た目が良い。見た目で判断するな、というメッセージを勝手に受け取りました)。

今回の当たり屋情報が最終的にTrueかFalseなのかは分からないが、いつの時代も変わらず、人はデマっぽい情報に振り回されてしまうのかと思うと、どっと疲れた。これだけインターネットが発達しているのだから、すぐに調べられるはずなのに… やっぱり情報を読み解く力は向上していないのか。今も昔もそう変わらないのか。それでいて、インターネットの利用は拡大しているから、余計にタチが悪い。根深い、根深い。

追伸:
今朝浜松市のホームページを確認したら、「当たり屋情報については浜松市では把握していない」という通知が出ていた。

ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも 行き詰まりを感じているなら、 不便をとり入れてみてはどうですか?

本作の表紙(Amazon.co.jpより)

ここ1ヶ月くらい不便益について考えてみてはモヤモヤしている。自分なりにある程度考えるまでは不便益本は読まないでおこうと思っていたのだが、どうもモヤモヤが取れないので「不便から生まれるデザイン」を読んでみた。やっぱりモヤモヤが残った。ここまできたらもはや解禁ということで、川上浩司さんの不便益本の2冊目「ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも 行き詰まりを感じているなら、 不便をとり入れてみてはどうですか?」を読んでみた。

前作では、不便益という概念をまとめるために試行錯誤されている感が本全体から伝わってきたが、本作はコラム・エッセイ的要素が削られ、ずいぶんと不便益が整理された印象を受けた(文章も平易になった)。おかげで僕の頭の中も大分整理することができた。

以下は本作のメモを記す。

Continue reading “ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも 行き詰まりを感じているなら、 不便をとり入れてみてはどうですか?”

不便から生まれるデザイン

不便から生まれるデザイン(Amazonより)

行動や態度変容を促すデザインのヒントを考えていたときに、たまたま出会ったのが川上浩司さんが提唱されている「不便益デザイン」という考え方。不便益とは「不便がもたらす効用」を意味する。「乗り物を使った方が楽だが、歩いてみると乗り物に乗っていたときには気づかなかったものを発見できた」など、不便だと思われていることもやりよう、実は良いこともあるのではというのが不便益である。この不便益の考え方をもちいて「豊かな」モノやサービスを作るデザイン手法を川上浩司さんは研究されている。

態度・行動変容のアイデアを生み出すには、常識的な考え方だけでなく不便益のような別の角度の考え方が必要だと思っていた。また「便利を追求することで、実は失っているものがあるのでは」「便利ではなく豊かさを実現するためのデザイン手法は何か」という考え方は、僕の問題意識と通ずるところがあった。

ということで、「不便から生まれるデザイン〜工学に活かす常識を越えた発想」を読んでみた。以下はその際のメモである。

Continue reading “不便から生まれるデザイン”

仕掛学

電柱柱のミニ鳥居(フォト蔵の@kyu3さんの写真より)

上の写真のように、街を歩いているとあれっと思うところに小さな鳥居が設けられていることがある。これ、「神聖な場所で悪い行いをしてはいけない」という感情を抱かせることで、立ち小便やゴミのポイ捨てを防ぐ工夫だそうだ。

このように、ある仕組みを入れることで、本人が意識しているか否かにかかわらず、人の行動を自然と違う方向に向かわせる方法を「仕掛け」と呼び、仕掛学を研究されている方がいる(松村真宏さん@大阪大学)。

この仕掛け学、僕がやろうとしている気づきの情報インタラクションデザインにも非常に関係があるので、松村真宏さん著「仕掛学〜人を動かすアイデアの作り方」を読んでみた。以下、簡単なメモを記しておく。


 仕掛学とは

  • 仕掛けとは、魅力的な行動の選択肢を増やすことで、自ずとそちらの行動が選ばれるように仕向ける方法論である。仕掛けられる人の行動を変化させること問題解決を図る方法論であり、仕掛けそのものによって問題解決を図るものではない
  • 「したほうが良い」と直接伝えても効果がないことは明らかなので、「ついしたくなる」ように間接的に伝えて結果的に問題を解決することを狙うのが仕掛け

仕掛けを定義する要件

  • FAD要件
    • 公平性(fairness):誰も不利益を被らない
    • 誘因性(attractiveness):行動が誘われる
    • 目的の二重性(duality of purpose):仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる
  • 誘因性は行動を誘う仕掛けの性質であり、行動変容を強制するものは仕掛ではない。仕掛けが行動の選択肢を増やしていること、および自分の意志で自由に行動を選べることが必要である
  • 仕掛けが対象としている本当の問題は明示されていないことが多い。問題を意識することなく興味の赴くままについ行動してしまう 

良い仕掛け

  • 良い仕掛けと悪い仕掛けを分けるのは、仕掛ける側と仕掛けられる側の双方の目的を知ったときに「こりゃ一本採られた」と笑顔になるかどうか
  • 行動と解決する問題の関係が一見すると無関係に見えるときほど、うまい仕掛けになる(仕掛けの副作用性)
  • 仕掛けの副作用性は、行動の多義性を利用することで生まれる

強い仕掛けと弱い仕掛け

  • 仕掛けに対する反応の強弱は、仕掛けから発生する「便益」と「負担」によって特徴付けられる
  • 便益:仕掛けによってもたらされる主観的な感情
  • 負担:仕掛けによって行動を変えるときにかかる体力的、時間的、費用的な負担

仕掛けの原理

  • 物理的トリガによって心理的トリガを引き起こされ、行動に変化が生じる
  • 物理的トリガ:知覚される仕掛けの物理的な特徴
  • 心理的トリガ:人の内面に生じる心理的な働き
  • 詳細なトリガの分類は書籍もしくは論文を参照
トリガの分類(Springerのサイトより)

「ポスドクになるためには?」と行かれたので

京都を去る前に、ある学生団体から「ポスドクになるためには?」というイベントに登壇して欲しいとの依頼があった。ポスドクを経験した身としては、とても違和感を感じるタイトルである。

長い間放置していたが、イベントで話そうと思った僕が知ってるポスドク情報を下記ページに簡単にまとめてみた。興味のある方はご覧ください。

「ポスドクとは何かと聞かれたら」の詳細ページ