夏の暑さから逃れるために,引佐の渋川を訪れた.その帰り道,林道の脇に雰囲気のあるレンガ造りの門が立っていることに気付いた.ぼけーっと車で走っていると気付かないくらいひっそりと立っているのだが,明らかにオーラが違う.車を一瞬止め,名称があるかを確かめ見ると,この遺構が「凱旋記念門」であることが分かった.
この凱旋記念門.日露戦争を記念して,この地に建てられたそうだ.いわゆる凱旋門である.明治時代,日本は欧米列強に追いつくべく,富国強兵を推進し,日清戦争・日露戦争といった軍事行動を行ったが,当時は戦争勝利を記念して日本各地でこのような凱旋門が作られたそうだ.ところが,アーチ型の凱旋門として現存しているのは,鹿児島は姶良市にあるものと,ここ浜松は引佐の凱旋門の2つのみ.大変貴重な歴史遺構である.
引佐の渋川という地区はサワガニが生息するようなきれいな川をもつ山村で,人気(ひとけ)はあまりない.こんな小さな山村でも凱旋門が建てられたことから,当時の日本がいかに日露戦争の勝利に沸き立っていたのか,その高揚感が伝わってくる.