「サルの自撮り」という面白い記事を見つけた.ある写真家が,細工を施したカメラをジャングルの中に置き,サルがカメラのシャッターを押して自撮りできるようにした.写真家の思惑通り,猿の自撮り写真が撮れたので,この写真家はサルの写真を「自分の作品」としてリリースした.
ところが,あるメディア団体が「著作権は法律上の人しか持つことができない権利なので,今回の写真はパブリックドメインである」として,公開されているサルの自撮り写真を自由に使って儲けを得た.写真家とメディア団体は法廷闘争に.この過程である動物団体が「サルにも著作権が認められるべきだ」と主張しはじめ,さらに混乱が生じる.最終的に「人間以外に著作権は認められない」という結論になった.経過をすべて終えていないのだが,「写真家にサルの自撮り写真の著作権がある」という結論には至っていないと思われる.
恥ずかしながらこの「サルの自撮り」の話は知らなかったのだが,この話は人工知能が生成した作品に著作権が発生するか否かに関係するものだ.CRIC 外国著作権法 英国編(大山幸房・今村哲也訳)によると,「コンピュータにより生成される文芸、演劇、音楽又は美術の著作物の場合には、著作者は、著作物の創作に必要な手筈を引き受ける者であるとみなされる」となっているが,人工知能が完全に自律的に作品を作った場合はどうなのか?
「サルの自撮り」の件を踏襲すれば,人工知能が作った作品には著作権は発生しないということになる.人工知能を使って文章や画像を作成して情報発信を効率化しようとする流れは加速している.人工知能に著作権は認められなくても,その人工知能を作った法律上の人と人工知能との共同著作にはしたいという人はいてもおかしくない.