大学教員の道に進む上で考えておくべき事(ソフトな意見)

博士後期課程に進む方の多くは,学位取得後も研究活動に携わりたいと思っていることでしょう.研究に関する職を探すとき,候補となるのがアカデミック(大学教員)と企業研究者です.これら2つは,職務や求められるマインド・スキル,就職のアプローチが大きく異なります.2つの職の違いを理解した上で,自分の進むべき道を決めることが重要です.

大学教員の仕事

「大学教員は自由気ままに好きな研究をやっていればよい」というのは今は昔の話.社会における大学の役割は変わりつつあり,大学教員には多様な役割が求められるようになりました.今,大学教員には(少なくとも)以下の役割が求められています:

  • 研究(博士号取得を目指している人がやりたいこと)
  • 教育(授業 + 卒論・修論指導)
  • 大学運営(教務,学生生活支援,広報,入試…)
  • 産学連携・地域貢献

(独立行政法人の研究者含む)企業研究者に求められる役割は「企業の将来的な利益に資する研究を行うこと」です.一方,大学教員に求められる役割は研究だけではありません.大学では企業よりも自由に研究テーマを選べるというメリットはあるものの,求められる役割が増えていることもあり,大学教員個人が研究にかけられる時間は少なくなっています.純粋に「研究だけをしたい」というのであれば,(自分のやりたい研究テーマに取り組めるかどうかは分かりませんが)企業研究者になることは有力な選択肢です.

こう言うと,大学教員になることに魅力がないよう感じるかもしれませんが,社会に置いて大学は依然重要な存在であり,大学教員として働くことは非常に意味のあることだと私自身感じています.また,大学には一般社会にはない独自の雰囲気があります.私はこの雰囲気が大好きです.大学大学教員は一般社会では得がたい魅力があるのも事実です.しかし,大学教員として生きていくためには「気概」が必要です.

求められる能力

上で述べたように,大学教員には多様な役割が求められていますので,研究能力以外の能力も鍛える必要があります.例えば,

  • 学生の指導力
  • 研究室のマネジメント能力
  • 授業設計・運営能力
  • 研究資金獲得能力

などです.とはいえ,博士後期課程在籍時に磨ける能力と磨けない能力があります.学生さんの皆さんは「研究力」を高め,良い研究成果を出すことに注力してください.良い研究テーマを定め,良い仮説を立て,それを立証する力は,研究者として独立するには必須となります.良い研究成果は継続的に出せれば,職や研究資金の獲得にもつながります.

アカデミアで職を得るには

一般的な企業の求人とは異なり,大学教員の職は決まったタイミングで求人が出ません.JREC-INをご覧になるとわかりますが,不定期に求人が出ます.意中の大学・研究所の職がいつオープンになるかを読むのは難しいです.有用な情報を得られるよう,学会などを通じて普段から人脈を構築しておくことをオススメします.

大学教員の職を得るには研究業績を積むことも大事ですが,一緒に働きたいと思ってもらえるかも重要です.そういう意味では,学会等で研究者と交流する際には,誠実であることも重要です.