このページは、2017年度後期に研究室配属される静岡大学情報学部3年生向けに、山本研究室あるいは他の研究室を検討するための参考情報として作りました。授業で話せなかったことも書いていますので、参考にしてもらえれば幸いです。
掲載項目
- 研究室選びは重要
- 何をしている研究室なのか?
- 研究室の研究・教育方針
- 研究テーマの決め方 〜 山本研でできること
- 楽 or キツい?
- 山本研究室を選ぶデメリット
- 山本研究室を選ぶメリット
はじめに:研究室選びは重要!
静岡大学情報学部にはたくさんの研究室がありますが、研究テーマはもちろんのこと、研究室の研究・教育方針、イベントの充実度、文化、雰囲気、財政状況は、研究室によって様々です。(学部で卒業する場合)大学研究室で過ごす時間はたった1年半しかありませんが、どこの研究室を選ぶかが、大学生活の充実度、自分の成長、人生観などに大きく影響します。限られた時間と情報の中で研究室選びをするのは大変かと思いますが、よく考えてみてください。このページを読んで何か聞きたいことがありましたら、遠慮なく山本にコンタクトを取ってください。いろんな研究室を見比べることも大事です。
個人的意見ではありますが、研究室選びのポイントの例を以下に記します:
- 研究室の研究内容
- 卒業研究のテーマの決め方
- 教員との相性
- 教員の忙しさ
- 研究室の雰囲気、先輩学生との相性
- 研究室における学生の滞在率
- イベントの充実度
- 研究を進める上で必要となる学習のサポート体制
- 研究室の財政状況
- 就職実績
連絡先
何をしている研究室なのか?
情報学応用論の講義や静岡大学公式サイトでは「情報の信憑性」に焦点を当てた話をしていますが、山本研究室は「情報の信憑性」の研究しかしない研究室ではありません。では、何をテーマにしているか。山本の大きな興味関心は、
情報技術の進歩で便利な生活に慣れきってしまい、大事な何かを失ってしまっている人に「気づきを与えて前向きな態度/行動変化を促すための仕掛けを情報技術を使ってどう実現するか」
です。このテーマを少しでも達成するために、サブテーマとして
- 情報の信憑性、
- 行動・態度変容の情報インタラクションデザイン、
- 気づき能力をアップさせる方法論
などを設定して研究しています。繰り返しますが、情報の信憑性のみを研究しているわけではありません。
研究のやりかた
研究とは「新しい仮説(クレーム)を立て、その正しさを検証する」行為です(参考:研究法について)。
仮説の立て方にも様々なタイプがあります:
- 既存システムの問題点を解決したり、効率や精度を高めるための方法論を考える研究(問題解決型研究)、
- みんなが気づいていない新しい問題・課題、世界観を提案する研究(問題発見型研究)など。
また、仮説を確かめる方法にも様々なタイプがあります:
- プロトタイプ(仮説が反映された仮のシステム、サービス、モノ、方法論)を使った実験を行い、仮説の検証を行うアプローチ
- 理論を使って仮説の正しさを証明するアプローチ
- 調査、シミュレーション、など
上で述べたタイプ分けを踏まえると、山本は冒頭で述べたテーマを実現するために、
- みんなが気づいていない新しい問題・課題、世界観を提案し、
- それを確かめるためのプロトタイプを使った実験を行う
というやり方を採っていると言えます。
また、冒頭で述べたテーマ、サブテーマを実現するためには、色々な技術や知見を組み合わせる必要があります。ですので、情報学をベースにはしていますが、それに拘らず色々な分野の知見技術を組み合わせて研究を行っています。
研究活動に関連するキーワード
研究分野や専門性で研究室選びを考えたいという学生もいると思いますので、山本がこれまで行ってきたこと、これから行いたいことに関連する内容を、敢えて専門分野キーワードに落としてみました。以下にそれを記します(分かりづらいと思われるものには関連する学会やウェブページ、書籍へのリンクを張りました):
情報検索、検索エンジン、データマイニング、機械学習、ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)、情報デザイン、説得工学、信頼、ヒューリスティックとバイアス、仕掛学、不便益、Fun Theory、ゲーミフィケーション、Visual Thinking Strategy
研究室の研究・教育方針
情報学応用論でもお話ししたように、学生のみなさんには「スゴい研究をすること」よりも「(スゴいかどうかさておき)研究を通じて自分を鍛えること」に主眼を置いた研究室活動に取り組んでもらいたいと思っています。
すべての学生が研究者になりたいわけではありません(教員、研究者の多くは、学生のみなさんに研究者になって活躍して欲しいと思っていますが…)。多くの学生は大学を卒業した後は企業に就職します。大学で研究活動を行う期間は、学部で卒業する人なら1年半、修士で卒業する人なら3年半です。そんな短い期間で、研究経験が乏しい学生にスゴい研究成果を出すことを要求するのは酷な話です。一方で、研究活動は、問題発見能力、問題解決能力、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力など、社会で活躍するための力(社会人基礎力)を伸ばすのにうってつけのツールであったりします。従って、研究者になりたい学生も就職する学生も、卒業後に社会で活躍できる力をつけてもらうためにも、研究を通じて社会人基礎力を磨いてもらえるような研究室運営をするつもりです。
もちろん、スゴい研究を一緒にできれば嬉しいです。僕自身はスゴい研究をしたいと思っています。しかし、上で述べたように、スゴい研究をすることを研究者と同じレベルで学生に求めると、研究者になりたいわけではない学生は辛い思いをすることになるしょう。研究室運営、学生の教育に対しての考え方は人それぞれですが、「研究を通じて社会人基礎力を磨いてもらうこと」が、結果的に「スゴい研究が生まれること」につながると信じています。
研究テーマの決め方 〜 山本研でできること
研究室に入ったら何を研究するのか、できるのか?研究室選びにおいて、研究テーマは重要な判断指標のひとつですよね。研究テーマで山本研を選ぶ場合、自分の興味関心が「何を研究している研究室なのか?」で説明した内容のどこかに関連しているかを確認してください。山本自身の興味関心や研究テーマに関心があればOKです。もし山本自身の興味関心や研究テーマに直接関心がなくても、「研究活動に関連するキーワード」のどれかに関心があれば、それもOKです。例えば、「情報の信憑性は別に興味はないけど、情報検索システムは作ってみたいんだよね〜」という場合でもOKということです。
研究室が決まったら、研究テーマはどのように決めるのか。研究テーマの決め方は研究室によって様々です。教員がテーマを決める研究室もありますし、学生にテーマを考えてもらう研究室もあります。まったく新しい研究テーマに取り組んでもらう場合もあれば、これまで研究室で行ってきた研究テーマを引き継いでもらうこともあります。
では、山本研究室はどうか?今年度は学生主体でテーマを決めたいと思います。具体的には、
- 学生の興味関心を聞きながら、
- それに合いそうなテーマを教員側からいくつか提案し、
- 気になるものがあればそれを修正しながらテーマを決定する
という方針で進めようと考えています。もちろん、学生側からピンポイントで「こんなテーマをやりたい」と提案してもらっても構いません。
楽 or キツい?
研究は、テストとは異なり、答えがない or 答えが分からない問題を扱います。学生の皆さんは、これまでの学校生活において、答えがない問題について考える機会はあまりなかったと思います。研究では、答えは自分で探す必要がありますし、場合によっては答えを見つける方法すら自分で作る必要があります。研究経験の乏しい学生にとっては、研究はストレスを感じる活動になるでしょう(逆に、誰も答えを知らないので、好き勝手に色々できるという醍醐味があります)。そういう意味では、どこの研究室に入っても楽ではないことは覚悟してください。誰でも必ず一度は何らかの試練が訪れることでしょう。
研究活動は大学の卒業要件の1つです。また、「研究室の研究・教育方針」でも触れたように、山本研では「研究を通じて社会人基礎力を鍛える」ことを重視しています。ですので、山本研究室が楽かキツいかと問われれば、楽ではないと答えます。とは言っても、スパルタ教育をしたり、結果が出ないからといって理不尽気切れたり… ということはしません。「研究室に入って色々学びたいんです」「社会に出ても問題ない能力を身につけたいんです」という気持ちがあれば、適度に自分に負荷をかけながら充実した研究室生活をおくってもらえると思います。
山本研究室を選ぶデメリット
当研究室を選ぶ最大のデメリットは、研究室に先輩学生がいないことかと思います。一般的に、大学研究室には教員スタッフや秘書さん以外に、学部生や大学院生がいます。教員は講義や学内の会議、出張等で研究室にいないこともあるので、必然的に学生が中心になって研究室生活が展開されます。自分の研究、就職活動、人間関係など,何か相談したことがあった時、まず頼るのは先輩学生です。研究室のイベントを企画・運営するのも、ふつうは先輩学生です。ところが、その先輩学生が山本研究室にはいないのです。これが山本研究室を選ぶ際の最大の悩み所になるでしょう。
このデメリットは自覚しているので、最大限努力はします。先輩学生が一人もいないということは、逆にメリットもあります。詳しくは以下の「山本研究室を選ぶメリット」でも記します。
山本研究室を選ぶメリット
先輩がいないということを補うメリットとしては、今年度の僕は(他の忙しい先生方に比べ)時間的リソースに比較的余裕があるということです。研究の経験が乏しい学生が研究をうまく進めていくためには、教員(研究者)の知恵・スキルをうまく使うことが
重要となります。教員が忙しいと学生と接する時間が少なくなります。教員と接する時間が少なくなると、何をしたらよいか分からない学生は不幸になる可能性が高いです(学部生の時の僕がそうでした)。幸い、今年の山本は時間的余裕があります。研究室に先輩学生がいないので、学生一人あたりにかけられるリソース(時間、研究費etc)が多いこともプラスに働くかもしれません。
上記以外で考えられる山本研究室を選ぶメリットを以下に記します:
- スタッフ(山本)が比較的若く、コミュニケーションがとりやすい
- 山本研究室1期生として、研究室の文化・雰囲気をゼロから作っていけること