ドーナツとフィルター

静岡大学浜松キャンパス附属図書館にキャリアに関連した書籍を推薦する機会をいただいた。何を推薦してもよいとのことだったので、大阪大学ショセキカプロジェクトの「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」を推薦した。

推薦文は150字で書くよう依頼があったので、もともと400字程度あった推薦文は削ることになった。せっかくなので、ここに圧縮前の推薦文を残すことにする。


ドーナツを穴だけ残して食べるには?くだらない、でも何故か気になるこの問題について、工学、数学、哲学などの専門家がそれぞれの立場からきわめて真面目に考える。これが本書の趣旨です。本書を読むと「面白いことに取り組むにはフィルターを外すこと」が重要ということに気付かされます。

ものごとを考えるとき、私たちは先入観というフィルターに縛れがちです。そのフィルターのせいで、より良い選択肢を逃してしまっていることもしばしば。進路の選択もその一例です。「情報学部に入ったら就職先はIT企業、職業はSE、プログラマ」 — こんなふうに選択肢を縛ってしまうことは非常にもったいない。皆さんが学んでいる知識やスキルは、思った以上に専門分野の外側で求められています。やりがいのある仕事、自分に合った働き方を見つけるためにも、一度「フィルター」を外してみてください。今まで考えてもみなかった仕事や働き方が見つかるかもしれません。

リサイクルヒソター

あるモノ(もしくはコト)xが(ある観点から見て)悪い状態に陥っている際、xの関与者のxに対する認識は様々である:

  1. xが悪い状態にあることを知らない
  2. xが悪い状態にあることを知っているが、どうしたらよいのか分からない(どうすることもできない)
  3. xが悪い状態にあることを知っているが、それが悪いとは思っておらず、状態を改善させるモチベーションはない

「リサイクルヒソター」の看板をかかげてリサイクルを受け入れている方は、どういう認識でいるのだろう。周りに間違っていることを教えてあげる人はいないのだろうか。教えてあげても修正しないのだろうか。

ここまで書いて、この看板は注目を集めるためにワザとやっている可能性を思いついた。注目を集めるほど人がいない田舎でこんなことをしてもあまり意味がないだろうから、注目集めの可能性は否定できるであろう。

ACM CIKM 2018に論文が採択されました

京都大学の山本岳洋さん、Yahoo! Japan研究所の藤田澄男さんとの共同研究 “Exploring People’s Attitudes and Behaviors toward Careful Information Seeking in Web Search” がACM CIKM 2018にフルペーパーにて採択されました。

本論文では、ウェブ検索エンジンのクエリログを用いて、批判的なウェブ検索ができるユーザの特徴を分析を試みています。

後日プレプリント版論文や発表資料をアップする予定です。

平成30年度基盤研究(C)(特設分野研究)の申請が採択されました

昨年10月に日本学術振興会 平成30年度基盤研究(C)(特設分野研究:情報社会とトラスト)に応募した申請プロジェクトが採択されました。研究課題名は「自律的・能動的な情報信憑性判断力を高める情報インタラクション」です。

本プロジェクトでは、ウェブ検索・閲覧を行うユーザが情報システムの力を借りつつも,最終的には自分自身で情報の信憑性(確からしさ)を判断できるよう,ユーザの信憑性判断能力を高め,自律的・能動的な信憑性判断を促進する情報インタラクション技術の開発を行う予定です。

固定観念:押して開かない蓋

注文していた単4電池が届いた。電池は上記のようなプラスチックケースに電池が納められていた。早速使いたかったのでツメを押して蓋を開けようとするが、まったく開かない。いかにも中華製のケースである。強く押さなければ開かないのだろうと思い、ありったけの力でツメを押すが開かない。中華製という理由で開けることを諦めた。

次の日、同じ商品を入手した学生にケースを開けられたかどうかを尋ねた。なんと、開けられたようだ。開け方を尋ねたところ、爪が引っかかっているように見える四角の輪のした部分を手前側に起こすことで開けられるとのことであった。開けにくいが、確かにその方法を試してみると、四角の上辺が軸となって、四角の輪が手前に動いた。

なんというBad User Interface!! と思えるが、それ以上に自分が他の方法を試さなかったこと、ツメを押して開ける開け方以外に方法はないと思っていたことにショックを受けた。

固定概念にハマっていることに気付くのは難しい。

「ファスト & スロー」14章のトム・W問題のベイズ推定について

研究室で輪読中の「ファスト & スロー」の14章で、直感(代表性ヒューリスティクス)を制御する方法としてベイズ推定を用いる話題が紹介されていた。同じ章で用いられている例題「トム・W問題」にベイズ推定を適用してみたときに基準率がどうなるかが解説されているのだが、学生から本の説明を読んでもよく分からなかったという報告を受けた。

淡々とベイズの定理を適用するだけだろうと思っていたのだが、たしかに問題文や解説文を読んで自分でベイズ推定をしてみようとしたが、何だかおかしい。小一時間考えてみたが、問題文の日本語訳が紛らわしい(誤訳?)ことがモヤモヤの原因だと分かった。来年以降も同じ事を学生に聞かれそうなので、僕なりの解釈を以下にまとめておこう。

トム・W問題について

トム・W問題とはある大学院生トム・Wに関する記述が与えられたときに、トムの専攻分野をコンピュータ科学を含むいくつかの分野から選択するという問題である。「ファスト&スロー日本語訳」で書かれているトム・Wに関する記述は以下の通り:

トム・Wはとても頭がよいが、創造性には欠ける。秩序や明晰さを好み、あらゆる細かい要素までしかるべき場所におさまっていて、万事がきれいに説明できるシステムを愛する。彼の書く文章はかなり単調で機械的であり、たまに陳腐な駄洒落じゃSFもどきの想像力が発揮されるにとどまる。彼は能力向上にはきわめて熱心である。他人のことにあまり関心がなく、同情心は薄いように見える。人付き合いを楽しむタイプではない。自己中心的ではあるが、倫理観はしっかりしている。(原文ママ)

この記述が与えられたときに、問題を与えられた人はたいていの場合、代表性ヒューリスティックを用いて意思決定を行ってしまい、その結果トムの専攻を「コンピュータ科学」と答えてしまう。合理的(統計的)判断を下すためにはベイズ推定を用いるのが一つのアプローチであるというのが本書の主張。以下は「ファスト&スロー日本語訳」でのベイズ推定アプローチに関する記述である:

ベイズ・ルールは、事前確率(本章の例では基準率がこれに該当する)に証拠の診断結果(相反する仮説が実現する見込み)を加味する手順を定めている。たとえばあなたは、大学院生の3%(基準率)がコンピュータ・サイエンス専攻だと考えているとしよう。そしてトム・Wの人物描写(=証拠)を読んだ後に、コンピュータ・サイエンス専攻の可能性は他分野よりも4倍高いと考えたとする。するとベイズ・ルールにより、トム・Wがコンピュータ・サイエンス専攻の確率(事後確率)は11%になる(原文ママ)。

問題の問題

脚注ではオッズや尤度比を用いた解説が書かれているのだが、愚直にベイズの定理を使って解くのがよいと思ったので、その方法で考えてみる。今、
* θ: 大学院生がコンピュータ科学を専攻しているという事象
* ¬θ: 大学院生がコンピュータ科学を専攻していないという事象
* D: トム・Wの人物記述(人となり)情報が得られたという事象
とする。ベイズの定理によって、トム・Wに関する人物記述が得られたときにトム・Wがコンピュータ科学を専攻していると思われる確率P(θ | D)は以下となる:

$$ P(\theta | D)   =   \frac{P(D | \theta)P(\theta)}{\sum_{\theta} P(D | \theta)P(\theta)} =  \frac{P(D | \theta)P(\theta)}{P(D | \theta)P(\theta) + P(D | \overline{\theta})P(\overline{\theta}) } $$

以上と問題文を対応させていけば解けると思っていたが、問題は尤度(P(θ | D))である。脚注の解説を読むと、「トム・Wの人物描写(=証拠)を読んだ後に、コンピュータ・サイエンス専攻の可能性は他分野よりも4倍高いと考えたとする」という箇所が尤度に関する情報を扱っているようなのだが、これって何を言っているのか?これは尤度だろうか?僕にはこの説明は尤度でなく事後確率の説明をしているようにしか見えない… 翻訳前の文章を見て悩みが解決した。この箇所に関する元の文章は以下の通り:

… and you also believe that the description of Tom W is 4 times more likely for a graduate student in that field than in other fields, then …

これを読むと、「トム・Wの人物描写(=証拠)を読んだ後に、コンピュータ・サイエンス専攻の可能性は他分野よりも4倍高いと考えたとする」ではなく、「あるコンピュータ科学専攻の学生にトム・Wの人物描写が当てはまる確率は、コンピュータ科学以外を専攻しているある学生に対してトム・Wの人物描写が当てはまる確率の4倍である」と書いてある。これならば尤度を計算できそう。僕が当初考えていた変数設定を使うと、上記英文は

$$P(D | \theta) : P(D | \overline{\theta}) = 4:1$$

となるので、ベイズ推定ができそう。

ベイズ推定によるトム・W問題の事後確率推定

これで準備が整った。問題設定を数式で表現すると、以下のようになる。

  • 大学院生の3%(基準率)がコンピュータ・サイエンス専攻だと考えている:P(θ | D)=0.03
  • あるコンピュータ科学専攻の学生に対してトム・Wの人物描写が当てはまる確率は、コンピュータ科学以外を専攻しているある学生に対してトム・Wの人物描写が当てはまる確率の4倍である: P(D | θ) : P(D | ¬θ) = 4:1

あとは、ベイズの定理に上の式を使う。

$$ P(\theta | D)   =   \frac{P(D | \theta)P(\theta)}{\sum_{\theta} P(D | \theta)P(\theta)} =  \frac{P(D | \theta)P(\theta)}{P(D | \theta)P(\theta) + P(D | \overline{\theta})P(\overline{\theta}) } $$

$$  =  \frac{0.03 \cdot P(D | \theta)}{0.03 \cdot P(D | \theta) + 0.97 \cdot P(D | \overline{\theta})} $$

$$  =  \frac{0.03 \cdot P(D | \theta)}{0.03 \cdot P(D | \theta) + 0.97 \cdot 0.25 \cdot P(D | \theta)} = 0.11$$

これで基準率(事前確率)3%でトム・Wの人物描写を見たら、事後確率が11%になり、基準率が3%から11%に修正されたと言える。めでたしめでたし。

研究室を検討している学生のみなさんへ(2018年度)

今年も研究室選びの時期がやってきました。このページは、2018年度後期に研究室配属される静岡大学情報学部3年生に向けてのメッセージです。研究活動あるいは研究室に対する山本の考え方をまとめてありますので、研究室選びの参考にしていただければ幸いです。

はじめに

学生のみなさんは研究活動あるいは研究室にどんなイメージを持っているでしょうか。配属されたい研究室はどんなところでしょうか。もしかして、こんな希望をお持ちですか?

  • 楽そうな研究室がよい
  • 勉強ができなくても何とかなる研究室がよい
  • 先生が優しそうな研究室がよい
  • 先生が手取り足取り何でも教えてくれる研究室がよい
  • ブラック研究室は嫌だ(注釈)

あらかじめお伝えしておきます。上のような要素を重視したい学生さんは、山本の研究室を選択肢から外した方が良いかもしれません。おそらく、学生さんも僕も不幸になります。ですので、そういう方はこれ以降のメッセージは読み飛ばしていただいて結構です。「いやいや、そんなことよりも大事なことがあるよ」とちょっとでも思った方はメッセージの続きを読んでください。「大学に入学したのはいいけど、これまで自分は一体何を勉強してきたのだろう?何か身に付いたことがあるんだろうか…?」「大学で勉強することの意義って結局何なのだろう」と思っている方、そういう方も以降のメッセージの前半だけでも読んでいただければ何かヒントが得られるかも知れません。長文ではありますが、時間があるときにご一読ください。

注:”ブラック研究室”の定義は人によって異なるため、僕の研究室がブラック研究室かどうかは一概には言えません。僕自身は自分の研究室運営のやり方はブラックだと思っていません。学生の意志を無視してひたすら膨大なタスクを与え続ける、拘束時間が長い、といったことはしませんので。ただし後述しますが、僕の研究室での卒業論文研究は幾分ハードかと思います。これまで「知的トレーニング」を受けたことのない学生にとって、自分で問題を設定し、自分で問題解決方法を考えることは体験したことのない苦しみでしょうから。

掲載項目

  1. 大学で学べること、学ぶべきこと
  2. 研究室選びは重要!
  3. 何をしている研究室なのか?
  4. 研究室の研究・教育方針
  5. 研究テーマの決め方 〜 山本研究室でできること
  6. 楽 or キツい?
  7. 山本研究室を選ぶデメリット
  8. 山本研究室を選ぶメリット

大学で学べること、学ぶべきこと

大学は何を学ぶところなのでしょうか?こう尋ねると、「専門分野についての知識やスキルを学ぶところでしょ」という回答が返ってきそうです。情報学部の学生さんでしたら、

  • 情報学に関する知識やスキルを学ぶところでしょ?
  • データベースとかAIとか情報処理に関する知識を学ぶところでしょ?
  • プログラミングを学ぶところでしょ?

という返事が返ってきそうです。みなさんにとっては「大学 = 授業」であり、授業といえば専門分野固有の知識やスキルについて話を聞くところという認識でしょうから、情報学部に関しては言えば、上記回答でも間違いではありません。では、ちょっとだけ質問を変えます。大学で最も学ぶべきことは何でしょうか?

大学で最も学ぶべきことは、データベース、AIといった情報処理の知識やプログラミングスキルではありません。こういった情報処理の知識やプログラミングを学びたいのであれば、世の中にはたくさん良書がありますし、最近ですとウェブ上にも良質なコンテンツがありますので、大学に来て学ぶ必要はありません。ご存知のとおり、大学教員が提供する授業は必ずしも分かりやすいとは言えませんので、出たくもない授業に出て知識を学習する時間を無駄にするようであれば、家や図書館で一人で勉強した方がよっぽどマシかもしれません。もっと踏み込んで言うならば、お客の要求を満たすような情報システムを開発するスキルを身につけたいのであれば、大学よりも専門学校へ行った方がはるかに実践的なトレーニングが受けられます。

改めて問います。大学では何を学び、何を身に付けるべきなのでしょうか?それは「問いを設定し、解決策を考える力」だと思います。企業の歯車として、上司から降ってくる解き方が決まっている仕事(ある程度の時間と知識、経験があればできること)を淡々とこなすだけであれば、問いを設定し、解決策を考える力は必要ないでしょう。問題を解くための知識とスキルがあればよいわけです。しかし、世の中では、解くべき問題がはっきりしていることはむしろ稀です。(スケール感は様々ですが)世の中をちょっとでも良くしたい、未来を創りたいといった場合は、進むべき道がはっきりしない or ない状況で問いを立て、問いを理解し、問いに対する解決策を考え出すことが必要となります。

「問いを設定し、解決策を考える力」はどうやったら身につくのでしょうか。これについては、一橋大学の楠木建先生が「大学での知的トレーニング:アタマがナマっている人へのメッセージ」という文書の中で述べられています。楠木先生は僕がいう「問いを設定し、解決策を考える力」を、コンセプチュアル・スキルと呼んでいます。そして、

  • 大学では、コンセプチュアル・スキルを鍛えるべきであること
  • コンセプチュアル・スキルのトレーニングは、大学以外の場所ではなかなか受けることができないこと
  • コンセプチュアル・スキルのトレーニングを積んできたか否かは、後にはっきりとした差として現れること

を述べられています。コンセプチュアル・スキルは誰しもが身に付けることができるが、そのためには時間をかけてトレーニングすることが必要とも述べられています。

僕も楠木先生の意見に同意です。そして、僕は大学研究室こそ、コンセプチュアル・スキルトレーニングを集中的に行えるほぼ唯一の場だと考えています。それゆえ「問いを設定し、解決策を考える力」という強力かつ汎用的な知的スキルを学ぶ場として、大学研究室は極めて重要な場といえます。

以上の理由より、山本の研究室では「問いを設定し、解決策を考える力」を鍛えることを非常に重視しています。そのことは、研究テーマの決め方、研究指導、研究室での活動に反映されています。ですので「問いを設定し、解決策を考える力」なんて自分には必要ないと思う人は、山本の研究室を希望リストに入れない方が良いでしょう。「問いを設定し、解決策を考える力」と聞いてちょっとでも興味あるいはひっかかりを感じた人は、引き続き本メッセージを読み進めてください。

研究室選びは重要!

「大学で学ぶべきこと」で述べたことを前提として、研究室選びを行う上で、僕なりのポイントを以下に記します。

静岡大学情報学部にはたくさんの研究室がありますが、研究テーマはもちろんのこと、研究室の研究・教育方針、イベントの充実度、文化、雰囲気、財政状況は、研究室によって様々です。(学部で卒業する場合)大学研究室で過ごす時間はたった1年半しかありませんが、どこの研究室を選ぶかが、大学生活の充実度、自分の成長、人生観などに大きく影響します。限られた時間と情報の中で研究室選びをするのは大変かと思いますが、十分に考えてみてください。このページを読んで何か聞きたいことがありましたら、遠慮なく山本にコンタクト(yamamoto あっと inf.shizuoka.ac.jp)をとってください。自分の希望や研究室の特徴を明確にするためにも、いろんな研究室を見比べることも大事です。

個人的意見ではありますが、研究室選びのポイントの例を以下に記します:

  • 研究室の研究内容
  • 卒業研究のテーマの決め方
  • 卒業研究の指導方針
  • 教員との相性
  • 教員の忙しさ
  • 研究室の雰囲気、先輩学生との相性
  • 研究室における学生の滞在率
  • イベントの充実度
  • 研究を進める上で必要となる学習のサポート体制
  • 研究室の財政状況
  • 就職実績
  • 連絡先

何をしている研究室なのか?

授業や静岡大学公式サイトでは「情報の信憑性」に焦点を当て話をすることが多いですが、山本研究室は「情報の信憑性」の研究しかしない研究室ではありません。では、何をテーマにしているか。山本の大きな興味関心は、

情報技術の進歩で便利な生活に慣れきってしまい、大事な何かを失ってしまっている人に「気づきを与えて前向きな態度/行動変化を促すにはどうすればよいか?そのための仕掛けを情報技術を使ってどう実現するか?どんな情報システム、サービス、メディアを設計すればよいか?」

です。このテーマを少しでも達成するために、僕自身はサブテーマとして

  • 情報の信憑性
  • 行動・態度変容の情報インタラクションデザイン
  • 気づき能力をアップさせる方法論

などを設定して研究しています。研究のアウトプットは様々です。仕掛けとして開発してきたものは、情報検索システム、アルゴリズム、アンケート・心理指標スキルアップのためのアナログツールなどが上げられます。仕掛けの対象となるユーザの行動分析、データマイニングなども行ってきました。

繰り返しますが、情報の信憑性のみを研究しているわけではありません。例えば、現在4年生が卒業論文執筆に向けて以下のような研究テーマを検討しています:

  • 人を笑わせる(面白い)情報の検索システム
  • 情報を精査する気にさせるブラウザ
  • B級・珍スポット検索
  • オンライン上の商品・サービスに関する誇張評価広告の発見
  • 人間-機械の協調作業による小説の半自動的創作システム
  • 情報の食わず嫌い・流し読みを防ぐ情報提示手法
  • 人文・社会科学系分野における学術成果創成メカニズム
  • 集合知の分析による芸術が社会に与える影響の分析

研究のやりかた

研究とは「新しい仮説(クレーム)を立て、その正しさを検証する」行為です(参考:「研究法」について)。

仮説の立て方にも様々なタイプがあります:

  • 既存システムの問題点を解決したり、効率や精度を高めるための方法論を考える研究(問題解決型研究)
  • みんなが気づいていない新しい問題・課題、世界観を提案する研究(問題発見型研究)

また、仮説を確かめる方法にも様々なタイプがあります:

  • プロトタイプ(仮説が反映された仮のシステム、サービス、モノ、方法論)を使った実験を行い、仮説の検証を行うアプローチ
  • 理論を使って仮説の正しさを証明するアプローチ
  • 調査、シミュレーション

など、上で述べたタイプ分けを踏まえると、山本は冒頭で述べたテーマを実現するために、

  • みんなが気づいていない新しい問題・課題、世界観を提案し、
  • それを確かめるためのプロトタイプを使った実験を行う

というやり方を採っていると言えます。また、冒頭で述べたテーマ、サブテーマを実現するためには、色々な技術や知見を組み合わせる必要があります。ですので、情報学をベースにはしていますが、それに拘らず色々な分野の知見技術を組み合わせて研究を行っています。

研究活動に関連するキーワード

研究分野や専門性で研究室選びを考えたいという学生もいると思いますので、山本がこれまで行ってきたこと、これから行いたいことに関連する内容を、あえて専門分野やキーワードに落としてみました。以下にそれを記します(分かりづらいと思われるものには関連する学会やウェブページ、書籍へのリンクを張りました):

専門分野

情報検索、ウェブマイニング、ヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)

キーワード

検索エンジン、データマイニング、機械学習、情報デザイン、説得工学、情報の信憑性、信頼、ヒューリスティックとバイアス、仕掛学、不便益、Fun Theory、ゲーミフィケーション、Visual Thinking Strategy、人と情報のエコシステム、デジタルデトックス、reflective design、critical design

研究室の研究・教育方針

学生のみなさんには「スゴい研究をすること」よりも「(スゴいかどうかさておき)研究を通じて自分を鍛えること。特に問いを設定するスキルを鍛えること」に主眼を置いた研究活動に取り組んでほしいなと思っています。

すべての学生が研究者になりたいわけではありません(教員、研究者の多くは、学生のみなさんに研究者になって活躍して欲しいと思っていますが…)。多くの学生は大学を卒業した後は企業に就職します。大学で研究活動を行う期間は、学部で卒業する人なら1年半、修士で卒業する人なら3年半です。そんな短い期間で、研究経験が乏しい学生にスゴい研究成果を出すことを要求するのは酷な話です。一方で、研究活動は、問題発見能力、問題解決能力(知的スキル)、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力など、社会で活躍するための力(社会人基礎力)を伸ばすのにうってつけのツールであったりします。したがって、研究者になりたい学生も就職する学生も、卒業後に社会で活躍できる力をつけてもらうためにも、研究を通じて知的スキル、社会人基礎力を磨いてもらえるような研究室運営をしているつもりです。

もちろん、スゴい研究を一緒にできれば嬉しいです。僕自身はスゴい研究をしたいと思っています。しかし、上で述べたように、スゴい研究をすることを研究者と同じレベルで学生に求めると、研究者になりたいわけではない学生は辛い思いをすることになるしょう。研究室運営、学生の教育に対しての考え方は人それぞれですが、「研究を通じて知的スキル、社会人基礎力を磨いてもらうこと」が、結果的に「スゴい研究が生まれること」につながると信じています。

研究テーマの決め方 〜 山本研でできること

研究室に入ったら何を研究するのか、できるのか?研究室選びにおいて、研究テーマは重要な判断指標のひとつですよね。研究テーマで山本研を選ぶ場合、自分の興味関心が「何を研究している研究室なのか?」で説明した内容のどこかに関連しているかを確認してください。山本自身の興味関心や研究テーマに関心があればOKです。もし山本自身の興味関心や研究テーマに直接関心がなくても「研究活動に関連するキーワード」のどれかに関心があれば、それもOKです。例えば「情報の信憑性は別に興味はないけど、情報検索システムは作ってみたいんだよね〜」という場合でもOKです。

研究室が決まったら、研究テーマはどのように決めるのか。研究テーマの決め方は研究室によって様々です。教員がテーマを決める研究室もありますし、学生にテーマを考えてもらう研究室もあります。まったく新しい研究テーマに取り組んでもらう場合もあれば、これまで研究室で行ってきた研究テーマを引き継いでもらうこともあります。

では、山本研究室はどうか?昨年度は学生主体でテーマを決めてきました。具体的には、

  • 学生の興味関心を聞きながら、
  • それに合いそうなテーマを教員側からいくつか提案し、
  • 気になるものがあればそれを修正しながらテーマを決定する

という方針で進めました。今年度は昨年度のやり方を踏襲しつつも、僕がいくつかテーマを用意して、その中から選ぶというオプションも考えています。もちろん、学生側からピンポイントで「こんなテーマをやりたい」と提案してもらっても構いません。むしろ大歓迎です。研究を進めるうえで、個人のモチベーションは重視するべきことの一つですから。

楽 or キツい?

研究はテストとは異なり、答えがない or 答えが分からない問題を扱います。学生の皆さんは、これまでの学校生活において、答えがない問題について考える機会はあまりなかったと思います。研究では答えは自分で探す必要がありますし、場合によっては答えを見つける方法すら自分で作る必要があります。研究経験の乏しい学生にとっては、卒業研究はストレスを感じる活動になることでしょう(逆に、誰も答えを知らないので、好き勝手に色々できるという醍醐味があります)。そういう意味では、どこの研究室に配属されても、楽すぎることはないと覚悟してください。誰でも必ず一度は何らかの試練が訪れることでしょう。

研究活動は大学の卒業要件の1つです。また、「研究室の研究・教育方針」でも触れたように、山本研では「研究を通じて知的スキルや社会人基礎力を鍛える」ことを重視しています。ですので、山本研究室が楽かキツいかと問われれば、楽ではないと答えます。とは言っても、スパルタ教育をしたり、結果が出ないからといって理不尽にキレたり… ということはしません。「研究室に入って色々学びたいんです」「社会に出ても問題ない能力を身につけたいんです」という気持ちがあれば、適度に自分に負荷をかけながら充実した研究室生活をおくってもらえると思います。

山本研究室を選ぶデメリット

当研究室を選ぶ最大のデメリットは、研究室に先輩学生が少ない、研究室の歴史が浅いことかと思います。僕の研究室は設立して2年目で、現在学生は4年生が6名しかいません。一般的に、大学研究室には教員スタッフや秘書さん以外に、学部生や大学院生がいます。教員は講義や学内の会議、出張等で研究室にいないこともあるので、必然的に学生が中心になって研究室生活が展開されます。自分の研究、就職活動、人間関係など,何か相談したことがあった時、まず頼るのは先輩学生です。研究室のイベントを企画・運営するのも、ふつうは先輩学生です。ところが、山本研究室にはみなさんの先輩となり得るのは6名の4年生だけです。歴史が浅く、研究室の文化や環境も発展途上です。OB/OGもいませんので、就職活動で得られる情報も他研究室よりも少ないかも知れません。これが山本研究室を選ぶ際の最大のデメリットになりえるでしょう。

山本研究室を選ぶメリット

先輩が少ない、研究室の歴史が浅いことを補うメリットとしては、僕は(他の忙しい先生方に比べ)時間的リソースに比較的余裕があるということです。研究の経験が乏しい学生が研究をうまく進めていくためには、教員(研究者)の知恵・スキルをうまく使うことが重要となります。教員が忙しいと学生と接する時間が少なくなります。教員と接する時間が少なくなると、何をしたらよいか分からない学生は不幸になる可能性が高いです(学部生の時の僕がそうでした)。幸い、まだ山本は時間的余裕があります。研究室に先輩学生がいないので、学生一人あたりにかけられるリソース(時間、研究費etc)が多いこともプラスに働くかもしれません。

上記以外で考えられる山本研究室を選ぶメリットを以下に記します:

  • スタッフ(山本)が比較的若く、コミュニケーションがとりやすい
  • 山本研究室2期生として、発展途上である研究室の文化や環境、雰囲気を作ることに関われる

何を映す鏡か

アムステルダム出張中、マウリッツハイツ美術館の前で見つけたミラー。通常ミラーは死角を確認するために設置するものと思うが、このミラーの周り180度は開かれており死角はない(残り180度は壁)。

ミラーは何のために設置されたのか?よく見るとこの設置場所から壁が一段下がっていることで画面奥側から身を隠せるようになっている。ここで何かこそこそとする人がいるのかもしれない。そうすると、このミラーは誰かがこの場所でこそこそ何かやっているときに、後ろから見れるようにするためのものだろうか?

あるいは、ミラーが向いている先には排水溝の方を向いていることから、この場所でタバコを吸ったり立ち小便をする人がいるのかも知れない。そう思うと、このミラーはそういう人に後ろから見られてるよ、無意識の注意喚起を与えるためのものなのだろうか?

ACM WebSci 2018で発表を行いました

2018年5月28-30日オランダはアムステルダムにて開催されたACM WebSci 2018にて、”Web Access Literacy Scale to Evaluate How Critically Users Can Browse and Search for Web Information”というタイトルの発表を行いました。

本公演に関する論文の書誌情報は以下のとおりです:

Yusuke Yamamoto, Takehiro Yamamoto, Hiroaki Ohshima, and Kawakami Hiroshi: Web Access Literacy Scale to Evaluate How Critically Users Can Browse and Search for Web Information, Proceedings of the 10th ACM Conference on Web Science (WebSci 2018), pp.97-106, Nederland, Amsterdam, May 2018.

また、本公演で用いた発表資料は以下でご確認いただけます。

Wikipediaダンプファイルのダウンローダ

年に1回くらいWikipediaのダンプファイルをダウンロードしたくなるのだが、その度にどのファイルを落としたらいいのか、どうやって落とすかを忘れてしまう。

こんなことに毎回頭を使いたくなくなったので、ダウンロードのためのPythonスクリプトを作成した。果たして次回以降楽になるのだろうか?

https://github.com/trycycle/wikipedia-downloader