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【Credibility for the 21st Century】2. ウェブ情報の特徴

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ウェブ情報の特徴1: ゲートキーパーの不足

  • 新聞や書籍,雑誌,テレビなどは,一定レベルの事実確認,内容のチェック,編集チェックを受けている.
  • 同様のチェックが,ウェブ情報に対して必ずしも行われているわけではない.
    • 「オンライン新聞サイトや有名なポータルサイトは内容のチェックを受けている」という声もあるだろうが,そういうサイトは広大なウェブ世界ではむしろ少数派.
    • ウェブ情報の大半は非公式な情報であり,どの程度内容の精査がされているのかは不明.
    • 内容チェックを受けなくても情報発信できるということが,正確な情報をウェブで発信しなければという社会的なプレッシャーを低減させる(Jonson and Kaye 1998)

 

ウェブ情報の特徴2: 異種情報の混在

  • 特徴的な例は「広告と非広告情報の混在」(Alexander & Tate 1999, Flanagin & Metzger 2000)
    • 紙出版物と比べて,ウェブ情報は広告とそうでない情報の区別が困難.
    • ウェブページ中で掲載されている広告情報が,ページ作成者が作った広告なのか,違うソースから掲載された広告なのかが分からない時もある(Alexander & Tate 1999)
  • 情報のソースが分からないと,掲載された情報を信頼してよいのか判断がつかなくなる.

 

ウェブ情報の特徴3: 情報発信者に関する評判情報の不足

  • 既存のメディアとは違って,ウェブ上では情報を配信するウェブサイトに対する評判情報というのが乏しい.情報ソースの評判を考慮して情報の信憑性を判断することができない.
    • 例:New York Timesは有名な新聞社だと分かっているので,そのサイトに掲載された情報の質は判断できるが,ウェブ上ではそのように発信者の名前で判断できることが少ない.
  • 「コンピュータは正確である」という思うがために「ウェブ情報は信用できる」と考える人もいる(Johnson & Kate 1998, Witmer 1998)
  • 権威付けがないににもかかわらず,プロフェッショナルに「見える」ウェブサイトが信用されてしまうことも少なくない(Flanagin & Metzger 2000, 2000a, Johnson & Kate 1998, Alexander & Tate 1999, GombdaWeb 1998, Rieh  & Belkin 1998).

 

ウェブ情報の特徴4: 改変の受けやすさ

  • 特定のルートを通じて発行される既存のメディア情報と異なり,ウェブ情報は改変されやすいし,改変されたことを検知するのも難しい (Alexander & Tate 1999)

 

参考文献

  • Alexander, J. E., & Tate, M. A. (1999): Web wisdom: How to evaluate and create inforamtion quality on the Web. Hillsdale, NJ: Erlbaum.
  • Johnson, T. J., & Kaye, B. K. (1998): Cruising is believing? Comparing Internet and traditional sources on media credibility measures. Journalism & Mass Communication Quarterly, 75. 325-340.
  • Flanagin, A. J. & Metzger. M. J. (2000): Perceptions of Internet information credibility. Journalism & Mass Communication Quarterly, 77, 515-540.
  • Flanagin, A. J., & Metzgcr. M. J. (2002a): The role of site features, user attributes, and information verification behaviors on the perceived credibility of Web-based information. Manuscript submitted for publication.
  • GomdaWeb.(1998): Perceptions of reliability. Retrieved July 24,2001, from htlp://www.stanford.edu/class/comm217/reliability/perceptions.
  • Rieh, S.Y., & Belkin, N.J. (1998): Understanding judgment of information quality and cognitive authority in the WWW. Journal of the American Society for Information Science, 5, 279-289.
  • Witmer, D. (1998): Introduction to computer-mediated communication: A master syllabus for teaching communication technology. Communication Education, 47, 162-173.

 

出典

Credibility in the 21st century: Integrating perspectives on source, message, and media credibility in the contemporary media
Authors: A. Flanagin, M.J. Metzger, K. Eyal, D.R. Lemus
Communication Yearbook 27 (2003)

 

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【Credibility for the 21st Century】1. イントロダクション

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ウェブの出現により問題になりつつあるオンライン情報の「信憑性」

  • ウェブの登場によって多様な情報に簡単にアクセスできるようになった.
  • ウェブ上には不正確であったり,偏った情報が存在する(Caruso 1999,GomdaWeb 1998, Shaw 1998, Sundar 1998,Null 2000,Ward 1997)
  • だからこそ,既存のメディアとは異なる情報のコントロール,評価,検証が必要となる.
  • ウェブ情報の信憑性に関する問題は研究者にも認識されつつある.

信憑性に関する研究は50年以上の歴史あり

  • 社会学のコミュニケーション学分野では,発信源の信憑性(Source credibility),メッセージの信憑性(Message credibility),メッセージを伝達するメディア媒体の信憑性(Media credibility)といった様々な信憑性研究がなされてきた.
  • これらの知見は,現在問題となっているウェブ情報の信憑性の研究にも活用できるはず.
  • 社会学の研究者もウェブ情報という新しいタイプの情報信憑性について研究し始めている(Flanagin & Metzger 2000, 2002a,Johnson & Kaye 19998, 2000, 2002,Kim Weaver & Willnat 2001,Kiousis 2001,Morris & Ogan 1996,Schweiger 2000,Sundar 1998, 1999,Sundar & Nass 2001)

本書のターゲット

  • ウェブ情報の信憑性を考える上で,過去の信憑性研究を導入する
  • 特に.「発信源の信憑性」,「メッセージの信憑性」,「メディア媒体の信憑性」に焦点を当てる.
  • 以上の信憑性観点から,信憑性の概念の整理,信憑性の評価方法,情報閲覧者/情報提供者のウェブ情報の関わり方などについて議論する.

個人的見解

  • 特に情報検索,データマイニングの研究者は,社会学の分野を敬遠せず積極的に知見を取り入れて,ウェブ情報の信憑性に係る情報検索・閲覧について研究すべき.
  • 信憑性の評価方法が一意に定まることは無い.様々な信憑性評価軸をどのように使うか.
  • 情報学研究者としては,「何らかの軸に基づく信憑性スコアリング」方法を研究することも重要だが,信憑性スコアを使ってユーザに情報をどう閲覧させるかが重要.ユーザ自らが”考える”仕組みを作らないと,表層的なスコアを見て情報の信憑性を判断するようになってしまっては,将来的にはユーザのためにならない.

 

 

参考文献

  • Caruso, D. (1999): Digital commerce: After a year on the credibility trail, a columnist finds that the Internet industry is still dangerously self-indulgent. The New York Times, p. C5.
  • Flanagin, A. J. & Metzger. M. J. (2000): Perceptions of Internet information credibility. Journalism & Mass Communication Quarterly, 77, 515-540.
  • Flanagin, A. J., & Metzger. M. J. (2002a): The role of site features, user attributes, and information verification behaviors on the perceived credibility of Web-based information. Manuscript submitted for publication.
  • GomdaWeb.(1998): Perceptions of reliability. Retrieved July 24,2001, from htlp://www.stanford.edu/class/comm217/reliability/perceptions
  • Johnson, T. J., & Kaye, B. K. (1998): Cruising is believing? Comparing Internet and traditional sources on media credibility measures. Journalism & Mass Communication Quarterly, 75. 325-340.
  • Johnson, T. J., & Kaye, B. K. (2000): Using is believing: The influence of reliance on the credibility of online polical infomiation among politically interested Internet users. Journalism & Mass Communication Quarterly, 77. 865-879.
  • Johnson. T. J., & Kaye, B. K. (2002): Webelievability: A path model examining how convenience and reliance predict online credibility. Journalism & Mass Communication Quarterly, 79. 619-642.
  • Kim, S. T, Weaver. D., & Willnat. L. (2001): Media reporting and perceived credibility of online polls. Journalism & Mass Communication Quarterly, 77, 846-864.
  • Kiousis, S. (2001): Public trust or mistrust? Perceptions of media credibility in the Information Age. Mass Communication & Society, 4, 381-403.
  • Morris. M., & Ogan. C. (1996): Tlie Internet as mass medium.Journal of Communication, 461(1), 39-49.
  • Null. C. (January 2000): Web of lies: Your online credibility faces an uphill battle. PC/Computing, 13,6
  • Schweiger, W. (2000): Media credibility – Experience or image? A survey on the credibility of the World Wide Web in Germany in comparison to other media. European Journal of Communication, 15, 37-59.
  • Shaw, D. (1998, August 6): New media playing field opens ways to more errors. LosAngeles Times, p. A1.
  • Sundar,S.S, (1998): Effect of source attribution on perceptions of online news stories. Journalism and Mass Communication Quarterly, 75, 55-68.
  • Sundar, S. S. (1999): Exploring receivers’ criteria for percepion of print and online news. Journalism & Mass Communication Quarterly, 76. 373-386.
  • Sundar, S. S.. & Nass, C. (2000). Source orientation in human-computer interaction; Programmer,networker,or independent social actor? Communication Research, 27, 683-703.
  • Ward, M. (1997). Surfing for the suckers. New Scientist, 156, 29.

 

出典

Credibility in the 21st century: Integrating perspectives on source, message, and media credibility in the contemporary media
Authors: A. Flanagin, M.J. Metzger, K. Eyal, D.R. Lemus
Communication Yearbook 27 (2003)

 

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信憑性指向のウェブ検索エンジン”CowSearch”を公開

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ウェブは誰でも簡単に欲しい情報が取得できる便利な存在だ.しかし,ウェブにアップロードされている情報の信憑性は保証されていない.


そこで,信憑性を判断しながら目的のウェブページを効率よく検索するためのシステムCowSearchを研究開発している.今日,ついにβ版を公開することにした.CowSearchは信憑性指向のウェブ検索を支援するために以下の機能を提供している:

  • ウェブページの信憑性を確認するために有用なスコア情報の可視化
  • 様々な信憑性の判断基準による検索結果の並び替え

CowSearch(β版)はこちらより利用可能.詳しい説明・利用方法についてはこちら

 

CowSearchはYahoo!検索エンジンの索引情報(正確にはGoogle)にリアルタイムにアクセスしているが,その後種々のコンピューティングを行っているため検索結果の表示に10秒程度かかってしまう.GoogleやYahoo!といった既存の検索エンジンになれているユーザの方々にとって,この待ち時間は非常にイライラすると思うが,あくまで開発中のシステムとして温かく見守ってもらえれば幸いである.

 

なお,システムの負荷状況によっては公開を一時停止する可能性があるのでご理解いただきたい.

 

 

【博士論文】ウェブ情報の信憑性分析

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タイトル

ウェブ情報の信憑性分析(論文をダウンロード

発表場所(日時)

京都大学大学院情報学研究科(2011/2/9)

アブストラクト

本研究では,玉石混淆のウェブにおいてユーザが安心してウェブ情報の検索・閲覧を行うために,社会心理学分野における信憑性の基礎理論と情報検索分野における検索・データマイニング技術を横断し,信憑性指向の情報検索・閲覧のための信憑性分析に関して以下の 3 つのトピックに焦点を当てて議論を行う.

データ対間の関係分析に基づくウェブ情報の信憑性評価

ウェブ情報の種類や評価観点によって異なる信憑性を集合的アプローチによって評価するための汎用モデルについて論じる.提案モデルでは,任意の観点からウェブ情報の信憑性を評価するために,評価対象であるウェブ情報をデータ対として表現し,関連するデータ対間のサポート関係の強さを分析する.このとき,「Supportive なデータ対を多く持つデータ対は信憑 性が高い」という仮説のもと,データ対として表現されたウェブ情報の信憑性評価を行う.信憑性の評価観点に応じてデータ対の構成,データ対間のサポート関係の定義を行うことで様々なウェブ情報の信憑性を評価することが可能となる.

ユーザの信憑性判断モデルの推定によるウェブ検索結果の最適化

情報の信憑性の判断基準はユーザによって異なる.2つ目の研究トピック では,ユーザの検索結果に対する信憑性フィードバック情報をもとにユー ザの信憑性判断モデルを推定し,それを用いてウェブ検索結果を再ランキ ングするシステムについて論じる.提案システムでは,ウェブ検索結果を信憑性の主要な判断指標ごとにスコアリングする.提案システムによって,ユーザは自身の信憑性判断指標に応じて,信憑性の高いページを大量のウェブページの中から効率よく検索することが可能となる.

ウェブ情報の集約による不確かなファクト型知識の信憑性判断支援

不確かなファクト型知識の信憑性を判断するための情報をウェブ情報の集約によって収集することでユーザの信憑性判断を支援するシステムについ て論じる.提案システムでは,信憑性検証対象として「エジソンは電気を発明した」といったようなフレーズで表現されるファクト型知識に焦点を当て,通常の検索エンジンでは収集するのが困難な様々な信憑性判断情報をリアルタイムに集約し提示する.これらの情報を提供することによって,提案システムはユーザの信憑性判断を支援する.

論文への思ひ

完成した時の感想は感慨深さ30%.研究に対する不満70%.ウェブ情報の信憑性という研究テーマは学術的にも情報検索,ウェブマイニング分野では(研究を始めた当初は)先行研究なんてほとんど皆無であった.しかも,この分野は

  • 検索結果の適合性(+多様性)や人気度といったメトリクスの枠を超えられていない(超えようとしていない)
  • マイニング屋さん,機械学習屋さんはGoogle,Twitter,Facebookなど産業界のサービス側からデータが降ってくるのを待っては食い散らかす

という状況になっており,学術界から社会的に意味のある革新的な提案というのができなくなっているのではと(僕は)感じていた.僕はウェブ情報の信憑性という研究テーマは社会的にも見ても非常に重要なテーマだし,学術的にもほとんど誰も取り組んでいなかった.だからこそ,僕は自分の研究テーマに対しては誇りをもっていた.

 

しかし,僕の力不足のために,学術界に「ウェブ情報の信憑性」というテーマで(本当の意味で)一石を投じるというところまではいけなかった.いつも査読者には”Your research is very interesting. BUT experiment is not enough”.これの繰り返しだった.「研究分野の前提を覆す研究」と「論文として採択される研究」との狭間に苦しんだ.学位取得のためには,信念を曲げ問題を作り,”論文のため”の研究せざるをえなかったこともあった.博士論文執筆の最低ラインをクリアした後,ようやく自分のしたい研究に手をつけられ始めたと思ったらタイムアウト.結果,僕の博士論文は妥協の固まりとなった.

 

博士論文の各研究課題に感想を述べてみる:

データ対間の関係分析に基づくウェブ情報の信憑性評価

  • 汎用モデルを構築するというのは聞こえが良い.しかし,モデルというのは抽象化/汎用的にすればするほど表現能力は上がるが,何のための道具なのかが分からなくなるものである.重大な問題を解くためのモデルを作るはずなのに,作ったモデルで解ける問題を探し始めたとしたら本末転倒である.

ユーザの信憑性判断モデルの推定によるウェブ検索結果の最適化

  • 一番最後に取り組んだ課題.僕がポジティブに取り組めた唯一の課題かもしれない.
  • サイエンス的側面の強い研究.僕にとって最も学びの大きかった研究である.だからこそ,もっと深くじっくりと研究に取り組みたかった.

ウェブ情報の集約による不確かなファクト型知識の信憑性判断支援

  • 「信憑性の判断情報の収集」のために「ウェブからの知識抽出」を行うのであって,「ウェブからの知識抽出」したものが「信憑性に判断に使えるかも」という方向性は僕にとっては明らかに間違い.僕は「ウェブマイニング研究者」ではなく「信憑性研究者」でありたかった.

 

このように振り返れば不満と自責の念しか出てこない博士論文であったが,そもそも素晴らしい博士論文を書ける人なんているのだろうか?指導教員に尋ねたところ

「博士論文とは勇気のかけらを拾い集めて作るものだよ」

という貴重な意見を頂いた.なるほど,確かにそうかもしれない.

 

これ以上博士論文の振り返りを行ったら,拾い集めたはずの勇気はただの「石ころ」であることに気付きかねないので,もうこれ以上博士論文はしばらく振り返らないようにしようと思う.

信頼性の判断を支援する技術が開発されているそうだ

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ある友人から

絡んでないの? RT @satzz: by NEC、東北大学、奈良先端科学技術大学院大学 (NAIST)、横浜国立大学 / ネット上の大量な情報を整理し、信頼性の判断を支援する技術が開発される – http://htn.to/E2QgMj

と尋ねられた.絡んでいないが関係なくはない.独立行政法人情報通信研究機構の情報信頼性プロジェクトに僕の研究室のボスもそして僕も参加しているのだから.

 

僕の博士課程における研究テーマは「ウェブ情報の信憑性分析」である.なので,信憑性については少しばかりは理解しているつもりである.情報科学屋が信憑性というものを理解せずに信憑性研究をやっていることには不満がある.そして,上記プロジェクトにおいて開発されたシステムにはいくらかの文句がある.

しかし一信憑性研究者として僕が彼らの研究やシステムに文句が言っても,彼らがプレスリリースで信憑性(彼らは「信頼性」と言っているが)を判断する技術を開発したと報告してしまえば,一応彼らが日本の情報科学屋の中で信憑性検証技術の開発の第一人者となってしまうのだ.しかも「独立行政法人情報通信研究機構」なんて名前のもとでやっているから,ぱっと見すごそうに見えるし.それは非常に悔しい.

 

実はここ数ヶ月の間に僕はウェブ情報の信憑性判断支援システムを開発してきたのだが,公開しないとなんだか癪だ.どうせ5月のCHI2011の発表までには公開せねばならないのだし… というわけで近日中に完全公開できるように準備しよう.