研究室を検討されている学生さんへ(2019年度)

今年も研究室配属の季節がやってきました.山本にとっては静岡大学に来て3回目の研究室配属となります.昨年,一昨年の研究室選びでも述べてきましたが,研究室は大学の研究・教育活動の中心です.ところが,研究室によって研究教育のスタイル,生活スタイル,文化が大きく異なります.したがって,どこの研究室を選ぶかが学生の皆さんの

  • 研究室生活における精神的充実
  • 知識やスキル
  • 思考方法や人間力
  • 価値観の形成
  • 人生設計(就職先・進路の選び方)

に大きく影響します.「たかが研究室選び」と思わず真剣に考えてみてください.なお,友達が「 XX先生の研究室は良いと思う」と言うからといって,自分もその研究室を選ぶという選び方はやめましょう.理想とする研究室の姿は,選ぶ学生(および研究室の主宰者)の価値観によって異なります.後述する視点を参考に,自分が研究室に何を求めているのかを考えてみてください.その上で,山本の研究室への配属を希望するか否かどうかを考えてみてください.

以下では研究室選びのポイント,および山本祐輔が主宰する研究室のポイントをお伝えします.


本記事を読み進める前に

以下の質問に答えてみてください.当研究室を希望する学生で、3つ以上の質問に「はい」と答えた方.当研究室はあなたの希望に合わないと思われます.2つ以下の方.当研究室の文化にマッチする可能性があります.どちらの方も以下の記事を読み進めて,当研究室へ配属希望を出すかをじっくり検討してみてください.

質問リスト

  • できるだけ研究室に来ずに済むようにしたい
  • できるだけ研究活動に時間を割きたくない(週20時間 < 3コマ×5日)
  • できるだけ頭を使いたくない
  • できるだけ簡単な研究テーマに取り組みたい
  • 手取り足取り答えを教えてほしい
  • 目標を立ててそれに向かって努力をするということをしたくない
  • 研究を進めるための勉強はできるだけ避けたい
  • 英語論文を読むのはできるだけ避けたい
  • プログラミングはできるだけ避けたい

研究室選びのポイント

ここ2〜3年の研究室配属の様子を鑑みて,学生の皆さんに特に考えて欲しいと思った2,3点を研究室選びのポイントとして挙げます(他のポイントが気になる人は,「研究室を検討している学生のみなさんへ(2017年度2018年度)」をご覧ください).

大前提:楽をして卒業したいか vs. 研究活動を頑張ってみたいか?

みなさんは,研究室を「大卒という資格を得るための最後の試練の場」として考えているでしょうか?それとも「研究活動を通じて知識・スキルを身につける場,面白い発明・面白い発見にチャレンジする場」と考えているでしょうか?どちらを重視するかは,研究室選択を考える上で重要な羅針盤となります.

静岡大学に限った話ではありませんが,楽に卒業させてくれる研究室も世の中には存在しています.大学の存在が「就職に向けた大卒資格を得るためだけの場」として認識している人が多くなってきている今日において,「できるだけ効率的に大卒資格を得たい.そのためには楽な研究室に入りたい」と思うことは,不思議なことではありません.(研究室の主宰者が公にするかはともかく)楽に卒業したいという願いを叶えてくれる研究室はきっと存在するので,もし楽をして卒業したいというのであれば,先輩などを通じて情報を仕入れてみてください.ちなみに後述しますが,当研究室は楽ではありません.

研究室選びのポイント1:研究内容

まず一番に考えて欲しいのは,研究室が行っている研究の内容が自分の興味と合うかです.研究を真面目に行っている研究室であれば,研究室主宰者(当研究室であれば山本)が

  • どのような目的でどんな研究を行おうとしているか
  • 具体的にどのような研究プロジェクトが行われているのか

に関する情報を提供してくれるはずです.それを参考にしながら,「これは面白い」と思える研究を行っている研究室を探してみてください.卒論であれば約1年,修論であれば約2年は(嫌でも)学生が主体的に研究に取り組むことになります.ですので,たとえ研究室の雰囲気が自分にマッチングしていたとしても,自分が興味のある研究でなければ気力が続かないと思います.

研究室選びのポイント2:コアタイム

コアタイムとは,(授業時間を除いて)研究室に滞在するべき時間帯のことを指します.例えば,「月から金曜日の朝10時から夕方5時までは研究室にいてください」といったように,学生が研究室に滞在すべき時間が設定されている場合があります.コアタイムが設定されているかは研究室によります.また,コアタイムの内容も研究室によって様々です.例えば,コアタイムを厳格に決めている研究室もあれば,「1日7時間は研究室にいてください.ただし,昼の1時から3時の間さえ研究室に来てくれれば,あとの5時間はどの時間帯(例:夜中)に研究室来て作業してもらっても構わない」といった設定の仕方をしている研究室もありえます.もちろん,コアタイムがない研究室もあります.

コアタイムには時間を拘束されるというデメリットが存在しますが,以下のようなメリットも存在します:

  • 規則正しい生活を送ることができる
  • コアタイムさえ守れば,その他の活動については自由
  • (コアタイムには誰かが研究室にいるので)分からないことがあれば質問ができる

研究室選びのポイント3:学生の雰囲気

いったん研究室に配属されれば1年以上は同じ研究室で過ごすことになるので,研究室メンバー,特に学生の雰囲気は大事です.特に,研究時間内外で研究室メンバーとフランクなコミュニケーションがとれるかどうかは大事です.関連して,研究がうまく進まなかったときに気軽に相談できるか(後輩を指導してくれるか)なども大事な視点です.研究室を選ぶ際には,「学生が楽しそうにしているか」「先輩とのコミュニケーションはとりやすそうか」「 研究室生活は充実しているか」を確認するようにしましょう.

山本祐輔が主宰する研究室について

以下では,先の研究室選びのポイントに沿って,山本が主宰する研究室について記します.

研究の方向性について

1つの価値観に縛られた社会に未来はあるのでしょうか?価値観に縛られた社会はタコツボ化し,いずれはどん詰まりになり,前に進む力を失うことでしょう.既存の価値観では対応できない新たな問題が現れたとき,それを解決することはできないでしょう.また,価値観が固定化された社会は変化に乏しく,新鮮味・面白みにかけることでしょう.

活き活きとした未来をつくっていくために,現在の延長線上にある社会課題を解決していくことはもちろん重要です.しかし,僕はそれ以上に考えられうる未来のシナリオを増やすこと,すなわち「未来の多様性」を高めることが重要だと思っています.そのためには,未来をつくる人々,未来に生きる人々が変化・行動を起こすことに前向きになり,新たな価値観を生み出そうとするきっかけや環境が必要と考えます.

そこで,山本が主宰する研究室では以下のミッションを掲げて研究を行っています.

人々の思考の活性化,認知能力の拡張および前向きな態度・行動を促進する情報インタラクションデザインあるいはメディア表現に関する研究を行う

具体的には以下のような研究プロジェクトを行っています.

  • 批判的情報探索を行うための情報インタラクション
  • ウェブ情報の信ぴょう性
  • 認知的情報検索
  • 博物館・美術館の鑑賞体験を高めるための新しい情報インタラクション
  • 忘却するウェブ環境
  • ソーシャルデザイン × 情報インタラクション
  • 創作活動を活性化させる情報インタラクション

研究活動のキーワード

以下は,当研究室で行っている研究活動の「学問的/技術的バックグラウンド」です.

  • 情報学
    • 情報検索・情報推薦
    • 情報の信憑性
    • Human-computer Interaction
    • データマイニング,機械学習,統計的モデリング
    • ウェブサイエンス
    • 情報図書館学
  • 心理学
    • ヒューリスティックとバイアス
    • 説得とヤル気の科学
  • デザイン学
    • 不便益,仕掛学,ナッジ
    • 態度変容/行動変容

学生が行っている研究テーマ

これまで当研究室で学生が行ってきた研究テーマをいかに記します:

山本自身が筆頭で行っている研究プロジェクトの詳細については,山本の個人ウェブサイトをご覧ください.

研究活動の進め方

当研究室はがっつり研究をする研究室です.ガチです.以下ではどのように研究室活動を行っているかを記します.

研究テーマ

研究テーマは学生と相談しながら決めます.テーマ設定は比較的自由にできますし,学生が希望するなら教員から研究テーマを与えることも可能です.いずれにせよ,簡単に達成できるようなテーマは設定しません(例:すでに誰かが行っている研究を改良し精度をUPさせるような研究).ミッションに掲げたように,山本は未来社会の多様性を高めるべく,本気で「人々の思考の活性化,認知能力の拡張および前向きな態度・行動を促進する情報インタラクションデザインあるいはメディア表現に関する研究」を行おうとしています.チャレンジングなテーマを設定し,何か新しいことを世の中に出したい,と思う方はぜひ研究室に来てください.誰もやっていないことを研究するのは大変なことですが,達成したときは充実感がありますし,研究を通じてさまざまなスキルが磨かれます.なお,山本のスタンスとして,学生がスキルを磨き研究を進めるためであれば,サポートは惜しみません.求められれば積極的にサポートします.また,結果が出なかったとしても一生懸命やっている学生は評価します.

定例イベント

研究活動を進めるために,当研究室では以下のようなイベントを行っています.

  • 定例研究会:週2回,1回あたり2時間
  • ジャーナルクラブ(国際会議論文や和文学術論文誌を読んで、その内容紹介):週1回1時間
  • 学生グループミーティング:週1回,1回あたり1時間程度
  • プログラミング勉強会:週1回,1時間程度

また,年間を通じて他大学の研究室との合同研究会や学会発表を行っています.詳しいメニューについては「ある研究室の定例イベント & 年間スケジュール」をご参照ください.なお,土日・祝日,夏休み・春休みはきっちりと休みます.

コアタイムについて

今年度からは研究室にコアタイムを設ける予定です.いまのところ,月曜日から金曜日の13時〜17時をコアタイムとして設定する予定です.この時間帯は研究室に滞在してください(授業で研究室を離れることはOK).コアタイム中は研究に関連する活動を行ってもらいますが,やるべきことを済ませたら研究室で何をしてもらっても構いません.

※ コアタイムを設ける代わりに,時間帯を設定せずに週20時間は研究室に滞在することをルールとして設けることも検討しています(上記コアタイムとそう滞在時間はほぼ同じ).

大学院(修士課程)進学について

必須ではありませんが,特段の理由がないのであれば,大学院(修士課程)へ進学を推奨します(2017年度生は6名中3人が進学.2018年度生は6名中3人が進学予定).理由は以下の通りです:

  • 卒論で取り組んだ研究をより面白く深めることができる
  • 就職先の選択肢を増やしたり,より良い就職先を見つけることができる
  • 将来やりたいことを実現するためのスキル・思考力を身につけられる

修士課程に進んだ方がよい理由については,「大学院博士前期課程(いわゆる修士課程)進学のすすめ」にその詳細を記しています.

どんな学生が当研究室を希望しない方がよいか?

これまで記した文章を読んでいただくと,当研究室は研究を割と真面目にやっている研究室,いわゆる「ガチ研究室」であることが少しは分かっていただけたかと思います.ということで,楽に卒業したい学生は当研究室への配属を希望しないことを強く推奨します.楽に卒業したいとはどういうことかが自分でも判断がつかない人は,以下の質問に答えてみてください.3つ以上の質問に「はい」と答えた学生については,当研究室では「楽に卒業したい」という人と見なします.当研究室への配属希望申請はご遠慮ください.

質問リスト

  • できるだけ研究室に来ずに済むようにしたい
  • できるだけ研究活動に時間を割きたくない(週20時間 < 3コマ×5日)
  • できるだけ頭を使いたくない
  • できるだけ簡単な研究テーマに取り組みたい
  • 手取り足取り答えを教えてほしい
  • 目標を立ててそれに向かって努力をするということをしたくない
  • 研究を進めるための勉強はできるだけ避けたい
  • 英語論文を読むのはできるだけ避けたい
  • プログラミングはできるだけ避けたい

指導学生が行動情報学科長賞を受賞

静岡大学で指導している修士1年生の齊藤史明君,中野裕介君が,2019年度前期行動情報学科長賞を受賞しました.同君は2019年度データ工学と情報マネジメントシンポジウム(DEIM2019)において学生プレゼンテーション賞を受賞し,そのことが今回の賞の受賞につながりました.

齊藤君,中野君,おめでとう.

2019年度の卒業研究指導に向けて

DEIM2019をもって2018年度卒業生の卒論研究活動が終わった.また4月から2019年度生の卒論研究が始まる.

当然ではあるが,はじめて卒業研究に取り組む4年生は研究とは何か,卒業研究の合格基準は何か,そもそも卒業研究の目的は何かを知らない.昨年度は口頭では説明したがうまく理解してもらえたかどうか分からない.

この話は,学生には早い段階でしっかりと理解してもらうべきだと思い,「卒業研究を始める学部生へ」という記事を書いた.割ときつめに書いた箇所もあるが,この記事内容を踏まえた上で卒業研究に取り組んで欲しいな.

DEIM2019で指導学生プレゼンテーション賞を受賞

2019年3月4〜6日にかけて長崎県はハウステンボスで開催された第11回「データ工学と情報マネジメントに関するシンポジウム(DEIM2019)」にて,研究室で指導している学部生齊藤史明くんと中野裕介くんが学生プレゼンテーション賞を受賞しました.

齊藤くんは「文章表現の曖昧さ指摘によるウェブ情報精査の態度・行動促進」というテーマで,中野くんは「脚本の内容と構成要素に基づく映画印象推定」というテーマで研究発表しました.

DEIM2019で研究成果を発表

2019年3月4〜6日にかけて長崎県はハウステンボスで開催された第11回「データ工学と情報マネジメントに関するシンポジウム(DEIM2019)」にて,今年度の研究成果を発表しました.

発表内容は以下の通りです:

  • 梅田浩郎, 山本祐輔:笑えるウェブ情報検索のためのクエリ推薦第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2019), pp.C7-2, March 2019.
  • 齊藤史明, 山本祐輔:文章表現の曖昧さ指摘によるウェブ情報精査の態度・行動促進第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2019), pp.C2-2, March 2019 (学生プレゼンテーション賞).
  • 藤堂晶輝, 山本祐輔:情報の食わず嫌いを抑制する情報提示方法第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2019), pp.G6-3, March 2019.
  • 中野裕介, 山本祐輔:脚本の内容と構成要素に基づく映画印象推定第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2019), pp.I3-3, March 2019 (学生プレゼンテーション賞).
  • 堀内進次, 山本祐輔:珍スポット検索のためのランキング手法の検討第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2019), pp.P1-141, March 2019.
  • 村西克仁, 山本祐輔:飲食店レビュー情報の集合知分析と意思決定支援第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2019), pp.F3-1, March 2019.
  • ポチラッタナチャイクル・スパナット, 山本岳洋, 山本祐輔, 吉川正俊:文書の意見と信憑性がユーザの検索行動および信念の変化に与える影響の分析第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2019), pp.C2-4, March 2019 (学生プレゼンテーション賞).
  • マハルジャンラビン, 白石晃一, 山本岳洋, 山本祐輔, 大島裕明:話題提供を行うための独居家族との「気配」共有システム第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2019), pp.I6-5, March 2019.
  • 楊澤華, 山本祐輔, 山本岳洋, 神門典子, 大島裕明:博物館の展示物と見学者の興味を関連付ける情報の発見第11回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2019), pp.E4-3, March 2019.

研究室を検討している学生のみなさんへ(2018年度)

今年も研究室選びの時期がやってきました。このページは、2018年度後期に研究室配属される静岡大学情報学部3年生に向けてのメッセージです。研究活動あるいは研究室に対する山本の考え方をまとめてありますので、研究室選びの参考にしていただければ幸いです。

はじめに

学生のみなさんは研究活動あるいは研究室にどんなイメージを持っているでしょうか。配属されたい研究室はどんなところでしょうか。もしかして、こんな希望をお持ちですか?

  • 楽そうな研究室がよい
  • 勉強ができなくても何とかなる研究室がよい
  • 先生が優しそうな研究室がよい
  • 先生が手取り足取り何でも教えてくれる研究室がよい
  • ブラック研究室は嫌だ(注釈)

あらかじめお伝えしておきます。上のような要素を重視したい学生さんは、山本の研究室を選択肢から外した方が良いかもしれません。おそらく、学生さんも僕も不幸になります。ですので、そういう方はこれ以降のメッセージは読み飛ばしていただいて結構です。「いやいや、そんなことよりも大事なことがあるよ」とちょっとでも思った方はメッセージの続きを読んでください。「大学に入学したのはいいけど、これまで自分は一体何を勉強してきたのだろう?何か身に付いたことがあるんだろうか…?」「大学で勉強することの意義って結局何なのだろう」と思っている方、そういう方も以降のメッセージの前半だけでも読んでいただければ何かヒントが得られるかも知れません。長文ではありますが、時間があるときにご一読ください。

注:”ブラック研究室”の定義は人によって異なるため、僕の研究室がブラック研究室かどうかは一概には言えません。僕自身は自分の研究室運営のやり方はブラックだと思っていません。学生の意志を無視してひたすら膨大なタスクを与え続ける、拘束時間が長い、といったことはしませんので。ただし後述しますが、僕の研究室での卒業論文研究は幾分ハードかと思います。これまで「知的トレーニング」を受けたことのない学生にとって、自分で問題を設定し、自分で問題解決方法を考えることは体験したことのない苦しみでしょうから。

掲載項目

  1. 大学で学べること、学ぶべきこと
  2. 研究室選びは重要!
  3. 何をしている研究室なのか?
  4. 研究室の研究・教育方針
  5. 研究テーマの決め方 〜 山本研究室でできること
  6. 楽 or キツい?
  7. 山本研究室を選ぶデメリット
  8. 山本研究室を選ぶメリット

大学で学べること、学ぶべきこと

大学は何を学ぶところなのでしょうか?こう尋ねると、「専門分野についての知識やスキルを学ぶところでしょ」という回答が返ってきそうです。情報学部の学生さんでしたら、

  • 情報学に関する知識やスキルを学ぶところでしょ?
  • データベースとかAIとか情報処理に関する知識を学ぶところでしょ?
  • プログラミングを学ぶところでしょ?

という返事が返ってきそうです。みなさんにとっては「大学 = 授業」であり、授業といえば専門分野固有の知識やスキルについて話を聞くところという認識でしょうから、情報学部に関しては言えば、上記回答でも間違いではありません。では、ちょっとだけ質問を変えます。大学で最も学ぶべきことは何でしょうか?

大学で最も学ぶべきことは、データベース、AIといった情報処理の知識やプログラミングスキルではありません。こういった情報処理の知識やプログラミングを学びたいのであれば、世の中にはたくさん良書がありますし、最近ですとウェブ上にも良質なコンテンツがありますので、大学に来て学ぶ必要はありません。ご存知のとおり、大学教員が提供する授業は必ずしも分かりやすいとは言えませんので、出たくもない授業に出て知識を学習する時間を無駄にするようであれば、家や図書館で一人で勉強した方がよっぽどマシかもしれません。もっと踏み込んで言うならば、お客の要求を満たすような情報システムを開発するスキルを身につけたいのであれば、大学よりも専門学校へ行った方がはるかに実践的なトレーニングが受けられます。

改めて問います。大学では何を学び、何を身に付けるべきなのでしょうか?それは「問いを設定し、解決策を考える力」だと思います。企業の歯車として、上司から降ってくる解き方が決まっている仕事(ある程度の時間と知識、経験があればできること)を淡々とこなすだけであれば、問いを設定し、解決策を考える力は必要ないでしょう。問題を解くための知識とスキルがあればよいわけです。しかし、世の中では、解くべき問題がはっきりしていることはむしろ稀です。(スケール感は様々ですが)世の中をちょっとでも良くしたい、未来を創りたいといった場合は、進むべき道がはっきりしない or ない状況で問いを立て、問いを理解し、問いに対する解決策を考え出すことが必要となります。

「問いを設定し、解決策を考える力」はどうやったら身につくのでしょうか。これについては、一橋大学の楠木建先生が「大学での知的トレーニング:アタマがナマっている人へのメッセージ」という文書の中で述べられています。楠木先生は僕がいう「問いを設定し、解決策を考える力」を、コンセプチュアル・スキルと呼んでいます。そして、

  • 大学では、コンセプチュアル・スキルを鍛えるべきであること
  • コンセプチュアル・スキルのトレーニングは、大学以外の場所ではなかなか受けることができないこと
  • コンセプチュアル・スキルのトレーニングを積んできたか否かは、後にはっきりとした差として現れること

を述べられています。コンセプチュアル・スキルは誰しもが身に付けることができるが、そのためには時間をかけてトレーニングすることが必要とも述べられています。

僕も楠木先生の意見に同意です。そして、僕は大学研究室こそ、コンセプチュアル・スキルトレーニングを集中的に行えるほぼ唯一の場だと考えています。それゆえ「問いを設定し、解決策を考える力」という強力かつ汎用的な知的スキルを学ぶ場として、大学研究室は極めて重要な場といえます。

以上の理由より、山本の研究室では「問いを設定し、解決策を考える力」を鍛えることを非常に重視しています。そのことは、研究テーマの決め方、研究指導、研究室での活動に反映されています。ですので「問いを設定し、解決策を考える力」なんて自分には必要ないと思う人は、山本の研究室を希望リストに入れない方が良いでしょう。「問いを設定し、解決策を考える力」と聞いてちょっとでも興味あるいはひっかかりを感じた人は、引き続き本メッセージを読み進めてください。

研究室選びは重要!

「大学で学ぶべきこと」で述べたことを前提として、研究室選びを行う上で、僕なりのポイントを以下に記します。

静岡大学情報学部にはたくさんの研究室がありますが、研究テーマはもちろんのこと、研究室の研究・教育方針、イベントの充実度、文化、雰囲気、財政状況は、研究室によって様々です。(学部で卒業する場合)大学研究室で過ごす時間はたった1年半しかありませんが、どこの研究室を選ぶかが、大学生活の充実度、自分の成長、人生観などに大きく影響します。限られた時間と情報の中で研究室選びをするのは大変かと思いますが、十分に考えてみてください。このページを読んで何か聞きたいことがありましたら、遠慮なく山本にコンタクト(yamamoto あっと inf.shizuoka.ac.jp)をとってください。自分の希望や研究室の特徴を明確にするためにも、いろんな研究室を見比べることも大事です。

個人的意見ではありますが、研究室選びのポイントの例を以下に記します:

  • 研究室の研究内容
  • 卒業研究のテーマの決め方
  • 卒業研究の指導方針
  • 教員との相性
  • 教員の忙しさ
  • 研究室の雰囲気、先輩学生との相性
  • 研究室における学生の滞在率
  • イベントの充実度
  • 研究を進める上で必要となる学習のサポート体制
  • 研究室の財政状況
  • 就職実績

何をしている研究室なのか?

授業や静岡大学公式サイトでは「情報の信憑性」に焦点を当て話をすることが多いですが、山本研究室は「情報の信憑性」の研究しかしない研究室ではありません。では、何をテーマにしているか。山本の大きな興味関心は、

情報技術の進歩で便利な生活に慣れきってしまい、大事な何かを失ってしまっている人に「気づきを与えて前向きな態度/行動変化を促すにはどうすればよいか?そのための仕掛けを情報技術を使ってどう実現するか?どんな情報システム、サービス、メディアを設計すればよいか?」

です。このテーマを少しでも達成するために、僕自身はサブテーマとして

  • 情報の信憑性
  • 行動・態度変容の情報インタラクションデザイン
  • 気づき能力をアップさせる方法論

などを設定して研究しています。研究のアウトプットは様々です。仕掛けとして開発してきたものは、情報検索システム、アルゴリズム、アンケート・心理指標スキルアップのためのアナログツールなどが上げられます。仕掛けの対象となるユーザの行動分析、データマイニングなども行ってきました。

繰り返しますが、情報の信憑性のみを研究しているわけではありません。例えば、現在4年生が卒業論文執筆に向けて以下のような研究テーマを検討しています:

  • 人を笑わせる(面白い)情報の検索システム
  • 情報を精査する気にさせるブラウザ
  • B級・珍スポット検索
  • オンライン上の商品・サービスに関する誇張評価広告の発見
  • 人間-機械の協調作業による小説の半自動的創作システム
  • 情報の食わず嫌い・流し読みを防ぐ情報提示手法
  • 人文・社会科学系分野における学術成果創成メカニズム
  • 集合知の分析による芸術が社会に与える影響の分析

研究のやりかた

研究とは「新しい仮説(クレーム)を立て、その正しさを検証する」行為です(参考:「研究法」について)。

仮説の立て方にも様々なタイプがあります:

  • 既存システムの問題点を解決したり、効率や精度を高めるための方法論を考える研究(問題解決型研究)
  • みんなが気づいていない新しい問題・課題、世界観を提案する研究(問題発見型研究)

また、仮説を確かめる方法にも様々なタイプがあります:

  • プロトタイプ(仮説が反映された仮のシステム、サービス、モノ、方法論)を使った実験を行い、仮説の検証を行うアプローチ
  • 理論を使って仮説の正しさを証明するアプローチ
  • 調査、シミュレーション

など、上で述べたタイプ分けを踏まえると、山本は冒頭で述べたテーマを実現するために、

  • みんなが気づいていない新しい問題・課題、世界観を提案し、
  • それを確かめるためのプロトタイプを使った実験を行う

というやり方を採っていると言えます。また、冒頭で述べたテーマ、サブテーマを実現するためには、色々な技術や知見を組み合わせる必要があります。ですので、情報学をベースにはしていますが、それに拘らず色々な分野の知見技術を組み合わせて研究を行っています。

研究活動に関連するキーワード

研究分野や専門性で研究室選びを考えたいという学生もいると思いますので、山本がこれまで行ってきたこと、これから行いたいことに関連する内容を、あえて専門分野やキーワードに落としてみました。以下にそれを記します(分かりづらいと思われるものには関連する学会やウェブページ、書籍へのリンクを張りました):

専門分野

情報検索、ウェブマイニング、ヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)

キーワード

検索エンジン、データマイニング、機械学習、情報デザイン、説得工学、情報の信憑性、信頼、ヒューリスティックとバイアス、仕掛学、不便益、Fun Theory、ゲーミフィケーション、Visual Thinking Strategy、人と情報のエコシステム、デジタルデトックス、reflective design、critical design

研究室の研究・教育方針

学生のみなさんには「スゴい研究をすること」よりも「(スゴいかどうかさておき)研究を通じて自分を鍛えること。特に問いを設定するスキルを鍛えること」に主眼を置いた研究活動に取り組んでほしいなと思っています。

すべての学生が研究者になりたいわけではありません(教員、研究者の多くは、学生のみなさんに研究者になって活躍して欲しいと思っていますが…)。多くの学生は大学を卒業した後は企業に就職します。大学で研究活動を行う期間は、学部で卒業する人なら1年半、修士で卒業する人なら3年半です。そんな短い期間で、研究経験が乏しい学生にスゴい研究成果を出すことを要求するのは酷な話です。一方で、研究活動は、問題発見能力、問題解決能力(知的スキル)、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力など、社会で活躍するための力(社会人基礎力)を伸ばすのにうってつけのツールであったりします。したがって、研究者になりたい学生も就職する学生も、卒業後に社会で活躍できる力をつけてもらうためにも、研究を通じて知的スキル、社会人基礎力を磨いてもらえるような研究室運営をしているつもりです。

もちろん、スゴい研究を一緒にできれば嬉しいです。僕自身はスゴい研究をしたいと思っています。しかし、上で述べたように、スゴい研究をすることを研究者と同じレベルで学生に求めると、研究者になりたいわけではない学生は辛い思いをすることになるしょう。研究室運営、学生の教育に対しての考え方は人それぞれですが、「研究を通じて知的スキル、社会人基礎力を磨いてもらうこと」が、結果的に「スゴい研究が生まれること」につながると信じています。

研究テーマの決め方 〜 山本研でできること

研究室に入ったら何を研究するのか、できるのか?研究室選びにおいて、研究テーマは重要な判断指標のひとつですよね。研究テーマで山本研を選ぶ場合、自分の興味関心が「何を研究している研究室なのか?」で説明した内容のどこかに関連しているかを確認してください。山本自身の興味関心や研究テーマに関心があればOKです。もし山本自身の興味関心や研究テーマに直接関心がなくても「研究活動に関連するキーワード」のどれかに関心があれば、それもOKです。例えば「情報の信憑性は別に興味はないけど、情報検索システムは作ってみたいんだよね〜」という場合でもOKです。

研究室が決まったら、研究テーマはどのように決めるのか。研究テーマの決め方は研究室によって様々です。教員がテーマを決める研究室もありますし、学生にテーマを考えてもらう研究室もあります。まったく新しい研究テーマに取り組んでもらう場合もあれば、これまで研究室で行ってきた研究テーマを引き継いでもらうこともあります。

では、山本研究室はどうか?昨年度は学生主体でテーマを決めてきました。具体的には、

  • 学生の興味関心を聞きながら、
  • それに合いそうなテーマを教員側からいくつか提案し、
  • 気になるものがあればそれを修正しながらテーマを決定する

という方針で進めました。今年度は昨年度のやり方を踏襲しつつも、僕がいくつかテーマを用意して、その中から選ぶというオプションも考えています。もちろん、学生側からピンポイントで「こんなテーマをやりたい」と提案してもらっても構いません。むしろ大歓迎です。研究を進めるうえで、個人のモチベーションは重視するべきことの一つですから。

楽 or キツい?

研究はテストとは異なり、答えがない or 答えが分からない問題を扱います。学生の皆さんは、これまでの学校生活において、答えがない問題について考える機会はあまりなかったと思います。研究では答えは自分で探す必要がありますし、場合によっては答えを見つける方法すら自分で作る必要があります。研究経験の乏しい学生にとっては、卒業研究はストレスを感じる活動になることでしょう(逆に、誰も答えを知らないので、好き勝手に色々できるという醍醐味があります)。そういう意味では、どこの研究室に配属されても、楽すぎることはないと覚悟してください。誰でも必ず一度は何らかの試練が訪れることでしょう。

研究活動は大学の卒業要件の1つです。また、「研究室の研究・教育方針」でも触れたように、山本研では「研究を通じて知的スキルや社会人基礎力を鍛える」ことを重視しています。ですので、山本研究室が楽かキツいかと問われれば、楽ではないと答えます。とは言っても、スパルタ教育をしたり、結果が出ないからといって理不尽にキレたり… ということはしません。「研究室に入って色々学びたいんです」「社会に出ても問題ない能力を身につけたいんです」という気持ちがあれば、適度に自分に負荷をかけながら充実した研究室生活をおくってもらえると思います。

山本研究室を選ぶデメリット

当研究室を選ぶ最大のデメリットは、研究室に先輩学生が少ない、研究室の歴史が浅いことかと思います。僕の研究室は設立して2年目で、現在学生は4年生が6名しかいません。一般的に、大学研究室には教員スタッフや秘書さん以外に、学部生や大学院生がいます。教員は講義や学内の会議、出張等で研究室にいないこともあるので、必然的に学生が中心になって研究室生活が展開されます。自分の研究、就職活動、人間関係など,何か相談したことがあった時、まず頼るのは先輩学生です。研究室のイベントを企画・運営するのも、ふつうは先輩学生です。ところが、山本研究室にはみなさんの先輩となり得るのは6名の4年生だけです。歴史が浅く、研究室の文化や環境も発展途上です。OB/OGもいませんので、就職活動で得られる情報も他研究室よりも少ないかも知れません。これが山本研究室を選ぶ際の最大のデメリットになりえるでしょう。

山本研究室を選ぶメリット

先輩が少ない、研究室の歴史が浅いことを補うメリットとしては、僕は(他の忙しい先生方に比べ)時間的リソースに比較的余裕があるということです。研究の経験が乏しい学生が研究をうまく進めていくためには、教員(研究者)の知恵・スキルをうまく使うことが重要となります。教員が忙しいと学生と接する時間が少なくなります。教員と接する時間が少なくなると、何をしたらよいか分からない学生は不幸になる可能性が高いです(学部生の時の僕がそうでした)。幸い、まだ山本は時間的余裕があります。研究室に先輩学生がいないので、学生一人あたりにかけられるリソース(時間、研究費etc)が多いこともプラスに働くかもしれません。

上記以外で考えられる山本研究室を選ぶメリットを以下に記します:

  • スタッフ(山本)が比較的若く、コミュニケーションがとりやすい
  • 山本研究室2期生として、発展途上である研究室の文化や環境、雰囲気を作ることに関われる

研究室を検討している学生のみなさんへ(2017年度)

このページは、2017年度後期に研究室配属される静岡大学情報学部3年生向けに、山本研究室あるいは他の研究室を検討するための参考情報として作りました。授業で話せなかったことも書いていますので、参考にしてもらえれば幸いです。

掲載項目

  1. 研究室選びは重要
  2. 何をしている研究室なのか?
  3. 研究室の研究・教育方針
  4. 研究テーマの決め方 〜 山本研でできること
  5. 楽 or キツい?
  6. 山本研究室を選ぶデメリット
  7. 山本研究室を選ぶメリット

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科学コミュニケーション

予想だにしていなかった方面から突然電話が掛かってきた.電話の内容は僕の研究と関連する諸処の質問であった.電話をかけられてきた方は情報検索やウェブマイニングの専門家ではなく,ましてや研究者ではない一般の方である.

諸処の質問があった後,話の流れで僕の研究のことについて突然尋ねられた.「ざっくり言うとどんな感じのことをやっているんですか?」と.よく考えると,最近は同分野の専門家の人,もしくは異分野の研究者の方にしか自分の研究について話をしていなかったため,一般の方に研究について,しかもものすごく短時間で説明する機会なんてほとんどなかった事に気付いた. Continue reading “科学コミュニケーション”

博士論文公聴会が終わりました

報告がちょうど1週間ほど遅れましたが,2011年2月9日に僕の博士論文「ウェブ情報の信憑性分析に関する研究」の公聴会発表が終わりました.朝9時からの発表だったので,見に来られる方は10人くらい,せいぜい審査委員の先生方と研究室の教員と博士学生数人だろうと思っていました.ところが僕の予想に反して,20人以上は来てくださった.研究室外の方も来てくださったのでとても嬉しかったです.来てくださった皆様,僕の拙い発表を見に来てくださって本当にありがとうございます. Continue reading “博士論文公聴会が終わりました”